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中谷彰宏
著者 [ コミュニケーション ][ 成功法則 ][ 自己実現 ]
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中谷彰宏
[インタビュー]
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自分を変えるきっかけを作る“言葉の魔法”(2)
2007.09.19
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成功とは、友人とは、体験とは、本気とは―― 人生の節目に答えをくれる言葉の数々
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□10年経っても色あせない言葉の威力とは
――――13冊とも10数年前に書かれたということは、当時30歳だった読者は今40歳、20歳でも30歳ということですね。
結構その10年は大きいよね。 その10年で体験していることは大きい。僕自身はもう780冊も書いているから、自分の書く言葉というのは、逆にどんどん自分の中から外へ出して忘れるようにしている。だから僕は、自分の本をすごく面白く読んでいる。なるほどねって。自分が吐き出した言葉なのに、自分の言葉で励まされている。読者と同じスタンスにいるということかもしれないね。
――――先ほど“シャッフルしている”というお話でしたが、そうすると時間軸はこの本の中でバラバラになっていると?
ない。中谷彰宏の中に時間軸はない。初めてツチエさんと本を出したのは僕が29歳、ツチエさんが28歳。この時と現時点において20年近く経っているけれど、この差が全くないし、それから多分20年後30年後にもないので、今この瞬間に30年前も50年前も100年前もここに存在するし、100年後もここに存在する。
――――それでは、名言集に出てくる言葉は30歳で書いたものもあれば40歳のものもあるけれど、その時代はもう飛び越えてしまっているんですね。
全然関係ない。だって『大人の恋の達人』という本を、僕は30歳で書いているんだよね。30歳で大人の恋を語るな、みたいな感じはするんだけど、今その本を読んでもなるほどな、と思うんだよ。それから29歳で『面接の達人』を出した。『面接の達人』をツチエさんと作ったのは29歳の時に書いて30歳で出ているかな、つまり30歳でツチエさんが29歳。すごいベストセラーを作ったもんだよね。
――――中谷さんは変らないけれども、読者の方は30代の自分から40代の自分へと変っていますよね。
成長しているね。
――――この本の中に「ここ一番で神のサインを見よう、神様のサインはいつもこうだ、行け」とあります。この言葉を私が若いときに読んでいれば、今と全然違う受け止め方をしたのではないかと思うんです。ですから他の読者の方も、昔はわからなかったけど今読み返すとすごく心に入ってくるとか、あのときどうしてすごく心に刺さったのだろうか、などといろいろなことを思い返すのではないでしょうか。
以前読んだ時と違うところに、線を引くのだと思う。ただ、それは若いと読めないということではなくて、若いときじゃないと刺さらない言葉もあるだろうし、経験を経てからじゃないと刺さらない、意味がわからない言葉というのもあって、どちらも味わえるというのがいい作りになっている。ディズニーの名作なんていうものは、みんなそういう風になっている。子供でも楽しめるし、大人が見ても、子供にはこの話は難しいだろうと思うくらい深い部分もきっちり描かれている。結果としてそうなっているだけだけどね、僕としては。
□中谷式「成功の定義」とは“成長し続けること”
――――読者の方にとっては、この名言集を読むいろいろな目的があると思います。元気になりたい、仕事で成功したいなどですね。中谷さんにとっては、この本を書くというのはやはり成功者としての意味があるのでしょうか。
幸福だね。
――――“幸福”ですか?
うん。この本、韓国語版は『中谷彰宏 幸福語辞典』というタイトルになっている。うまいなと思った。成功したけれど幸福になれない人もいる。ちっとも羨ましくないとか、なんかスカスカだなとか、潤いが何にもなくてカサカサになっている人よりは、もっと先の幸福になるためにはどうしたらいいだろうかということだよね。それは実践するということではなくて、この中にある一言を何かあった時にお守り代わりに持っておくということ。意味がわからなくてもいい。僕は、意味がわからない人にもちゃんと講演で一生懸命本気で話しているから。ここでメモしておいてね、という感じで。中谷さんがあんなに必死で喋っていて、何を必死で喋っているのかわからない、みたいな人はいる。新人研修で講演に行くと、そんな感じなんだよね。でもそこでインプットだけしておいて、いつかそれが必要になったときにバッと開ける用意がしてあるといい。
――――もしかすると10数年前は読み飛ばした、流れてしまった言葉が、今名言集で読み返してみるとものすごく響くことがあると?
例えば流通スーパーでもあることだけど、商品のレイアウトを変えると発見されるということがある。違うレイアウトにすると「あ、ここにこんなものが出たんだ」とお客さんが気づく。でも、今出たのではなくて前からあった。
――――中谷さんの本には「成功」という言葉がよく登場しますよね。読者の方にも、成功したい、成功のためのヒントというキーワードから読まれている方が多いと思います。ただこの10年間で「成功」という言葉が世の中で変遷してきているような気がしますが、中谷さんは「成功」という言葉の意味をどのように捉えていますか。
要は、成功という言葉の定義は個人個人で違うんだよね。例えば30歳の人が40歳になると成功の定義が変わってくる。それは2つの意味があって、成功の定義が変わる条件というのは、本人が成長して意味が変わる場合と、世の中が変わって意味が変わる場合の2つがあるけど、世の中が変わることによって言葉の定義が変わってはいけないんだ。その人は世の中に振り回されているんだよね。だから成功の定義というのが“ヒルズに住む”ということになってしまったら、その人は多分10年後にはまた違う定義になっているよ。 そんなことよりは自分が成長することによって、以前は「成功」をこう定義していたけれど、これから自分はこんなふうになる、こういうことを成功というんだ、という自分なりの成功の定義をきっちり持っていかなきゃいけない。 つまり僕自身の中では成功は成長なの。成功というのは成長していく、自分を磨いていくということなので、相手に勝つということじゃない。武道で言えば勝ち負けじゃなくて、自らが修行して自らを磨いて、勝ち負けではなくて内容のあるいい試合ができるということ。これが僕にとっての成長であって、“大きく”でも“高く”でもなく、“狭く”“深く”なんだ。
――――なるほど。この10年間の中で、成功するために目指すものが変わった人というのはいますよね。社長になりたいという人もいましたし、景気がよくなるとやっぱり大企業の社員でいいかな、などと……。
成功というと大体が、“大きい”“高い”になる。そして、経営者がこれに嵌っていくと必ずはじける。だって満足度が得られないから。 だから“もてる”ということを基準におくと、その人の“もてる”の意味が大勢の人からチヤホヤされることになってしまえば、どこまでいっても満足できない。100人彼女がいたら200人になっていくけど、ところが満足はできないんだよね。1人1人の関係性が薄まっていくだけだから。それよりは1人と長く深くのほうがいいはずなのに。
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