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本間 裕
経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師 [ 資産運用 ]
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イランを巡る攻防戦/ラッファー曲線
2012.03.09
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●イランを巡る攻防戦
現在、「イラン」に関して、いろいろなニュースが報道されているが、 この点については、大きな注意が必要だと考えている。
つまり、「表面上の報道」と「水面下の動き」を 分けて考える必要性があるものと感じているのだが、それは、 「イランの核開発」に関する経済的な制裁は、 単なる表面的な報道にすぎず、実際には、 「水面下で、基軸通貨を巡る争いが起きている」という可能性があるからだ。
具体的には、「イラン」の裏側には、「中国」と「インド」、 そして、「ロシア」の存在が噂されており、実際に、 「過去数年間、石油などの決済に関して、 USドルの影響力を小さくしようとしていた」 という思惑が存在していたのである。
つまり、「世界の貿易」に関して、「USドル」ではなく、 「その他の通貨」を使おうとしてきたのだが、このことは、 「基軸通貨国としてのアメリカの地位」を低下させる効果が存在するのである。
そのために、「アメリカ」は、「経済制裁」を加えることにより、 「ホルムズ海峡」をイランに封鎖させ、結果として、 「イラン攻撃の理由」を作ろうとした可能性もあるようだが、 実際には、なかなか、思惑通りに、事態が進展していないようである。
そして、今回、世界的な噂となり始めたのが、 「イランがインドに原油を輸出し、その代金を、 金(ゴールド)で支払う」というものだが、 仮に、このことが実施されたとしたら、その時には、 「USドルの価値」が低下するだけでなく、 「世界全体の金融システム」に対する信頼感が 大きく損なわれる可能性もあるようだ。
つまり、現在の「通貨」は、「政府に対する信用」だけを基本としており、 その結果として、「フィアット・マネー」という 「実物に裏打ちされていない通貨」が、世界的に大膨張したからである。
しかも、現在では、「歴史的な金融大混乱」が世界的に広がっているのだが、 今回の「イランを巡る攻防戦」については、「現代通貨の正体を、 一挙に、世界に知らしめる」という効果が存在するものと考えている。
そして、結果としては、「信用だけに裏打ちされた通貨」が価値を失い、 「実物資産の代表」とも言える「金(ゴールド)」へと、 一挙に、資金が殺到することが考えられるようである。
また、海外の専門家は、すでに、この点を熟知しており、 そのために、「金価格の理論値」についても、 いろいろな数字が出始めているのだが、基本的には、 「現在、世界にどれだけの『お金』が存在するのか?」 ということが、最も重要なポイントとも言えるようである。
(2012年2月7日)
●ラッファー曲線
経済学の基本的な理論の一つとして、「ラッファー曲線」が挙げられるが、 このことは、「税収」と「税率」との関係を表わしたものであり、 「税率がゼロ%ならば、税収はゼロになり、また、 税率が100%になれば、やはり、税収がゼロになる」というものである。
そして、「国家にとって、最高の税収を見込める税率は、 ゼロから100%のどこかに存在する」という、 きわめて「曖昧な考え方」でもあるのだが、 現在のような「増税論議」が活発に行われている時には、 国民にとって「必要な知識」とも言えるようである。
また、「国家が、国債を発行できる条件」としては、 「将来、国民が税金を支払い、現在の借金を払う」 という前提が存在するのだが、問題は、現在のように、 「先進国の全てが膨大な借金を抱えている時に、 どれほどの税金を支払えば、国家の借金が無くなるのか?」 という点である。
つまり、「日本に存在する1000兆円の借金を返済するには、 どのような税率で、どのような経済条件と期間が必要なのか?」 ということだが、やはり、この時のポイントは、 「国民が国家を信用している間は、目に見える税金を黙って支払う」 ということである。
ただし、一旦、国家に対する信頼感が無くなると、今度は、 「国債を買う人がいなくなり、国家が借金不能の状態になる」 という状況が訪れるのだが、この時に活躍するのが 「目に見えない税金」である。
つまり、「日銀が、大量の紙幣を増刷して、国債を返済する」 という「インフレ税」のことだが、この時に起きることは、 「税率が、限りなく、100%に近付く」ということである。
別の言葉では、「国民が知らない間に、大量の紙幣が発行され、 いつの間にか、資産が没収される」ということが、 過去の歴史では、頻繁に起きているのだが、 「このことに気付く人は、100万人に1人もいなかった」 というのが、今までのパターンだったのである。
そして、今回も、歴史が、再び、繰り返されようとしているようだが、 現時点での注意点は、「世界の8大中央銀行のバランスシート」であり、 具体的には、「過去数年間に、きわめて異常な大膨張をしている」 ということである。
つまり、現在の「国債」に関しては、 「国家が発行し、中央銀行などが買い付ける」という構図が、 世界的に広がっているのである。
そして、今後、想定されることは、 「国債の発行ができなくなり、世界的な金利の上昇が起きた時に、 どれほどのスピードで、紙幣の増刷が行われるのか?」 ということだが、過去の歴史を見る限りは、 「約6カ月」という短期間のうちに、天文学的な紙幣の大増刷が行われ、 「気付いた時には、インフレの大津波に飲み込まれている」 ということである。
(2012年2月8日)
本間裕(経済評論家、第一商品「経済・商品セミナー」レギュラー講師)
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