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本田哲也
ブルーカレント・ジャパン代表取締役 [ マーケティング ]
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本田哲也
[インタビュー]
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「インフルエンサー」がマーケティングを変える(2)
2008.01.09
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1人の発言が30万人影響する時代―― メディア、ブロガー、口コミ……全てを巻き込む新発想とは
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□こんな身近にある「インフルエンサー」3つのタイプ
―――この本のでは、「インフルエンサー」というものは3つのやり方があると書かれていますが。
はい。実はですね、3つのインフルエンサーというふうに定義づけているんですけども、非常にまあ、この本の中でもそうですし、この手法の中で重要な話なんですね。3つのインフルエンサーというのは、1つはメディアなんですね。
―――メディアというと。
マスメディアですね、テレビ、新聞というマスメディア。 2つ目が、本の中ではプロフェッショナル・インフルエンサーというふうに定義していますが、これはいわゆる専門家の方ですとか、例えばカリスマのモデルの方ですとか、あるいはお医者さんのような方、研究者のような方、とにかく専門性をもたれて影響力をもっている方、これがプロフェッショナルなインフルエンサーというふうに定義しています。 3つ目は、個人インフルエンサーということで、1人の個人としてのインフルエンサー、つまりブロガーさん、カリスマブロガーさんという方がいま、活躍の中心かと思うんですけれども、この3つに分けている。 よくですね、インフルエンサーの話をさしあげると、「あっ、ブロガーですよね」と。「カリスマブロガーのことですよね」とか、あるいは「例えば、みのもんたさんのような方ですよね」とかですね、みのもんたさんがちょっと言っただけで次の日スーパーからある食材が無くなるとかいう話、あれもインフルエンサーなんですけれども、人によっていろんな反応があるんですね。そのどれもが実は当たっているんですけれども、それぞれにその役割が違うという話と、あとやっぱりマスメディアというのも依然、インフルエンサーであるという定義ですね。こういう、いろんな影響の与え方があるなかで、3種類のインフルエンサーがいるんだということを把握して、それぞれのインフルエンサーをどういうふうに活用するかという、また組み合わせの問題なんですね。ですから、ブロガーさんのことだけ考えていても難しいですし、マスコミだけを活用するということだけでも難しい時代になってる。インフルエンサーの組み合わせというものが重要だということが、いまいえるのではないかなと思っています。
―――組み合わせの仕方というのは、商品やテーマによって変わってくるのでしょうか。
そうですね。変わってくると思いますね。ただ、この3つが重要であるというのは、実はたとえそれがどんな商品やサービスであっても、基本はあまり変わらないと思っているんですね。具体的に、例えばどういうことが起こるかというと、だいたい成功するパターンというと、プロフェッショナルなインフルエンサーから始まるケースが多いんです。例えばある商品ですとかサービスのお墨付きを与えてもらうとか、みのもんたさんなどもそうですけれども、「これはいい」ということを専門的な立場からお墨付きを出すような存在というのがまず、必要になってくるんですね。すると何が起こるかというと、そういう方がいらっしゃると、今度はマスコミが報道を始めたりするんですね。ここでメディアというインフルエンサーが稼動し始めるわけです。 あと、ブロガーさんというところを見ると、面白いんですけれども、とくにカリスマブロガーと呼ばれるような、月間に何十万ページビューという閲覧数を誇るような方というのは、ネタを探しているんですね。ですから普通の方よりもマスコミの報道などにアンテナを巡らしていたりして、ちょっと自分に関係のある情報がマスコミで報道されたりすると、やっぱりそれをもとにブログの記事を書くということがある。ですからマスメディアというインフルエンサーが、カリスマブロガーというインフルエンサーにまた影響を与えたりするということで、こういう流れができてくるんですね。ですからこれは、どんな商品でも、商品に限らずサービスでも、こういうインフルエンサーの順番というか、流れを作っていくというのが大事なポイントだと思っています。
―――その辺りのことが実際に本には書かれていますから、ぜひ読んでいただければと思いますね。
そうですね、ぜひ。
□インフルエンサー・マーケティングへの転換は“止められない”
―――本には具体的なケースなど幾つか書かれていますが、本を作るにあたってご苦労されたところがありましたか。
そうですね。やはりこういう内容ですし、一つの体系化した手法の話ではあるんですが、やっぱり具体例がないと、「本当にそれって成功するものなのか」とか、全くチャレンジしたことのない読者の方はやっぱり具体的にイメージできないというところがあるので、なるべく具体例を盛り込むということを最優先で考えたんですね。 ただ、やはり苦労した点というと、当然その具体例は企業さんの、実際に我々の会社がサービスさせていただいている会社もありますし、そうじゃない会社もあるんですけれども、どこまで開示するかというのが非常に難しい問題なんですね。ですからそこは、いろいろと話し合いをさせていただいたり、範囲を決めさせていただいたりして、やらせていただいたんですけれども、なかなか、肝心なところは開示できないとか、結果はちょっと難しいというケースもあって、実際はたぶんこの倍は取材していますね。実際に本のなかで紹介した事例の倍以上、お話をうかがったり、進めていたりしたのですけど、いろいろな理由でバサバサと切られたり、切ったりして、最終的にいま載っている事例に収まったんですけれども。 事例を紹介させていただいている企業さんには、非常に深い理解を示していただいて、限られた範囲ではありますけど、読者の方が具体的にイメージしていただけるような事例をご提供いただいたことに非常に感謝しています。何とか盛り込めるだけのいい事例というのは、用意できたかなと思っています。
―――インターネットを、マーケティングの手法のなかで、インフルエンサー的な取り組みとして普通にやっていく時代になったのでしょうか。
どうでしょうね。まだ現段階では、導入が進んでいるというところではないですかね。やっぱりこの1、2年くらいで非常に増えてきていまして、大きな企業さんでも、割と先進的なチャレンジをされるところは導入されていますし、今年になってからとくに大きな企業さんの導入事例が増えているかと思います。まだまだですね、それでどういう結果が出るのかというのは検証も進んでいる状態ですから、来年、再来年、どのくらいのスピードで普及してくかというのが見えない部分がありますけれども、こういうメディアの環境になってしまったというのは、もう絶対に後戻りはないですから、やはりインフルエンサーをどういうふうに活用していくかというのが、マーケティング全体の中で、必須の、必ず手をかけなければいけない部分になっていくのではないかと思います。
―――読ませていただいて、すでにインフルエンサー的なマーケティングが普通に行われているということではなくて、その初めが来たんだということを感じました。読者の方にとっても、これから取り組んでいかなくてはならないのだと思いますが、どういう方にこの本を読んでほしいと思われますか。
やはり広告ですとかマーケティングに携わる、PRですとか、商品やサービスをどのように売っていくのか、どういうふうに消費者の方に伝えていくのかということに日々、頭を悩ませてご苦労されて、考えていらっしゃる方が対象だとは思います。 とくに、チャレンジをされる方。これ、一つ難しいところというのは、広告というのは、自分達の言いたいことを100パーセントいえるんですね。メディアを買っていますから。ただ、インフルエンサーと一緒にやっていく活動というのは、ここが難しくもあり、ただ可能性がものすごくあるところなんですけれども、第三者とやっていきますから、必ずしも自分達の言いたいことだけが伝わるとは限らない。その代わり、自分達よりも消費者が信頼する方とタッグを組めるわけですね。ですからいろんな工夫が必要になってきますし、チャレンジ心がないとやっぱり躊躇してしまうところがあるんですね。ですから、これからの新しいマーケティングのやり方、それから、どういうふうに消費者の方に理解してもらうかというところに、新しい切り口でチャレンジをしていきたいというふうに思っていらっしゃる読者の方に、ぜひぜひ読んで、実践してほしいなと思いますね。
―――はい、ありがとうございます。本日のゲストは『その1人が30万人を動かす!』の著者、本田哲也さんにおいでいただきました。 「インフルエンサー」という言葉を聞いたことのある方はまだ少ないと思います。ただ、これから広がっていくテーマでしょう。インターネットの仕事をしていると、デズマーケティングとか、口コミとかブロガーという言葉は普通に出てくるものなのですが、おそらく企業においてのマーケティング手法では、まだまだ当たり前ではありません。これから、どのような形でビジネスに投入されていくのか、ぜひ注目していきたいと改めて思いました。 本田さん、どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
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