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神田昌典
作家/経営コンサルタント
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神田昌典
[インタビュー]
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神田昌典が時代を読む!Part5‐(2)
2007.10.04
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ロジックを超えた時代が来る
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――――先程のスピリチュアリズムに入っていった、ビジネスと融合しつつあるということと、今の話はまったく別個なんですけど、ちょっと通じているところがありまして、それは時代認識ということなんですね。先程のスピリチュアリズムという話をしたのは、別にスピリチュアリズム、精神世界どうのこうのということが重要なのではなく、むしろやはり人間の心理的な影響というものをビジネスが無視できなくなっている、と。そういうことが非常に強くて、心理面を理解すれば理解するほどそういった心理学者と同時に、スピリチュアルカウンセラーというような人達の言うことも情報の1つとしてビジネスマンは聞き始めているということがまずある。時代認識としてはそういった心の問題というものにフォーカスをしたビジネスというものが、受け入れられていくということがまずはあると思うんです。今でもコーチングというものもありますし、それから臨床心理に基づいた人とのリーダーシップということだって言われ始めていますね。そういう影響が更に先に進むとどうしても、ユングもそうでしたけれど、心理学者であるユングがスピリチュアリズムに傾倒した。それからユングが星占いに対してものすごく理解を持っていたとか、そういうところまで行き着くわけなんですね。だからそこの線引きが非常に難しいんですけど、ビジネスのほうでもそういった傾向が出てきている。
これと、僕が先程から言っているPC、モバイル型のPCというのは僕の中では同列に世の中を見ている方法なんですけど、それはどういうことかと言うと、この回でずっと言ってきました“成長カーブ”の考え方なんですね。“成長カーブ”というのはどういうことなのかというと、ビジネスで言えば今までの方法論すなわちロジカルなベースに基づく方法論というものが成熟してしまった時は、新しい考え方が出ざるをえないわけです。それは超ロジカルであり、人によってはクリエイティビティと言いますし、非合理的、非ロジカルなところ、直感とかそういうところに基づいたビジネスの創造というものが次の時代に作っていくわけですね。じゃあその直感であるとかクリエイティブだとかいうことは一体何なのか、というと直感が重視されるということはロジックだけではないところ、すなわちスピリチュアルなものに対する許容力というものが増えているというのが、次の時代のビジネスの歩みの形になってきてもおかしくはない。それを肌で感じる場所として、私は今回のアメリカのツアーがあった。そういったところで空港に行くと、今度はコンピューターのほうも何が出てきているかというと、モバイルPCと言いますか、モバイルで物事が成される時代。これは日本の携帯文化と同じですけども、ただ向こうはまだキーボードなんですね。だからブラックベリーというやつでしたっけ、こういう小さいモバイル型のやつでキーボードの配列はタイプの配列と同じですね。親指文化とはちょっと違うんです。ただ、それが出始めていて、でかい広告キャンペーンが打たれていて、実際に空港の移動のバスでペンタブレットPCをやっている。
これがなぜ重要と僕が考えているかというと、「そうだな」と思ったんです。というのは、この回で“成長カーブ”が時代を認識する上で非常に重要だと言っているわけですが、ここで何が起こっているかというと、こういう風に考えるわけです。成長期が成長カーブの中で成熟期に近づくと、新しい商品が生まれるという話をちょっとしましたよね。PCというのは、その非常にわかりやすい例なんです。 昔から何があったかというと、大きなPCがあってコンピューターよりものすごく大きいスーパーコンピューターみたいなものがあって、それがどんどん小さくなってパーソナルコンピューターになった。昔はオフコン、と言われていたわけでしょ。オフィスコンピューターと言われていた。それがパソコンになって、今度はラップトップになって、ラップトップがノート型の小さいパソコンになって。そういうふうに常にコンピューターというのは商品ライフサイクルを縮めながら進化しているわけです。
ここで次に、一体コンピューターはどういう形になるかということを、予測しないといけないわけです。ノートPCというものが以前は成長期だったけれど、今は成長期ではないですね。それにインターネットというところで見れば、PC上のインターネットが成熟期に来てしまって次は何かな、と思っていたらブロードバンドのインフラが整って今度は携帯電話に来てしまった。僕が考えていたのは、このインターネットのPC市場、PCでインターネットをする市場というのが飽和した結果、次に携帯が来たな、と思っていたわけです。携帯に来たので、これはちょっと予測と僕が考えていたのと、面白い展開だったんですけど、本当はPCでもうちょっと新しい展開があるのかなと思っていたんですが、実際には早めに起こったのがこの携帯というところで、携帯でのブロードバンドのインフラができてしまったんですね。僕はPCでブロードバンドのインフラがかなりできるかなと思っていたんですけど、それが急に携帯のほうに飛んでしまいまして。それは飽和していたPCマーケットに対して風穴を開けて、新しい市場を生み出しているということがあると思うんです。
もう1つですね、今回、バスの中でペンタブレットを持ってやっていた人を見て思ったのは「あ、そうか」と。僕が昔から考えていたのは、次の世代のPCというのは一体何なのかというと、まず1つにはキーボードからの呪縛というものから離れるということが非常に重要であって、そこの革新をどうやって生み出すか、というのが非常にポイントになるな、と思っていたんですね。だけど携帯で皆がやり始めて、そこは考えなくていいのかなと思っていたんですが、やはり親指だけで入力するのは大変。ブラックベリーのような、小さいやつで入力するのもすごく大変なんですね。とすると、入力の制限を越えるものが大きな新しいPCの潮流になってくるのかと考えると、2つあります。音声認識のテクノロジーが出てくるか、それから見落としていたのがペンタブレットですね、タブレットPCがどこまで出てくるか。タブレットPCというのは、要するに画面に書けるやつですね。画面に書けるような機能であれば実を言うと、大きな画面は必要なくて小さな画面、すなわち任天堂DSのようなものでワードからエクセルから何から何から全部できてしまう。こういう時代が恐らく来るのかな、ということを非常に感じ取りましたね。
実際に、“マインドマップ”というトニー・ブザンさんが開発したノートの記述法があって、それは極めて手書きを重視して、絵を重視するような手法なんですけど、そういう人達はPCを持ち歩くときにはタブレットPCを持ち歩いて、ペンを取り出してそのペンの上でマインドマップと言われるノートの取り方をして、お互いコミュニケーションし始めている。日本語の場合には若干その認識スピードが遅くなるので、まだ市場が立ち上がっていませんけど、これが極めて次の次世代っぽいな、と。すなわちキーボードという呪縛がなくて人間の感覚、身体感覚の中にコンピューターが取り組まれていく。今まではコンピューターに身体感覚を合わせていたんですけど、逆にこれからは身体感覚にコンピューターが合ってくる時代なのかな、という風に考えましたね。
だからパソコンというか、PC上のインターネットについては明らかに飽和期に来ていますから、そのブレイクする新しいものがどういうときにブレイクするのかな、ということで結構見ているんですが、それは何かというと、今までのデジタルが非ロジカルすなわち超ロジカルと言ってもいいと思いますけど、それが融合していく。パソコンにおいてはデジタルという1・0(イチ・ゼロ)の世界と、今度はアナログ、要するに曲線であるとか絵であるとかそういうものに対して融合していく。要するにロジックを超えた、もしくはデジタルを超えたものが融合していく時代になる、と。そしてビジネスの世界では、また同じようにロジックだけの合理性、分析、データ収集だけではなく、むしろ直感であるとか、それから更に我々が経営ではまったく目に見えないところの情報、スピリチュアリズムというものを取り入れたもの、心理的なものを取り入れたものが、また新たに起こってきているような気がします。
ですから「時代を読む」ということで僕はこの“成長カーブ”ということを見ながら説明してきましたけど、やっぱり時代が変わるというとき、1つの物事が変わるときには、人間のコミュニケーション方法自体が変わる、人間の価値観自体が変わるので、いろいろなところで似たようなことが起こるのかな、というふうに思っています。 今回は著者の集まりの話と、PCの話と、幅の広い話でしたけど、根本的にやっているのは、通用しているのはロジックだけの時代ではなく、ロジックを超えた時代が2、3年後にかなり浸透し始めるのではないかな、というのが今回の結論でした。
はい。神田さん、どうもありがとうございました。
――――ありがとうございました。
「神田昌典が時代を読む!」次回もお楽しみに。
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