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高橋俊介
キャリアコンサルタント [ キャリア ]
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高橋俊介
[インタビュー]
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上昇志向より“本物志向”の時代(3)
2007.07.11
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自分が心から満足できる働き方とは? ――「スローキャリア」のすすめ
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やってみないことには、自分を輝かせるキャリアは見つからない
――――生き急ぐというのか、キャリアを急ぐ若者が増えたというお話がありましたが、一方で景気がよくなる中で、終身雇用制の会社や大企業に入りたいという人が増えてきたという話を耳にするのですが、そういう志向も増えているのでしょうか?
これに関してもいろいろと調査があるのですが、基本的には昔ほどではないにしても、大企業で安定的な雇用のところを望む人は増えてきています。昔ほどではないですが、それでも4割くらいはいるんですよ。 だけど昔とちょっと違うのは、やはり最近はコンピタンシーインタビューとかがあって、リーダーシップがあるかとか、社会性あるかとか、企業側もすごく人を見る。昔だったらいい大学出ていればいい、みたいな感じだったのに、真っ当な企業ほどそのあたりをかなり見ているんですよ。 そうすると同じ学部、同じ大学でブランド的には変わらないにもかかわらず、内定がたくさん出る人と、そうじゃない人の二極化というのが確実にこの10年ぐらいで起きていると思います。その中で自分の力で切り開いていける自信のありそうな人って、何割かなんですよ。同じ学部で、同じ大学であっても、同じブランドであっても、本当に2割、3割しかいません。残りの人たちは「あそこまでは自分の力では行けないぞ」って不安になるんです。その人たちがむしろ、だったら少しでもセカンドベストを狙うといいますか、より大企業の安定したところに行かないと「あの連中とまともに戦うのはしんどい」という人たちが希望しているのが実態だと思いますよ。 昔だと逆に、一番上昇志向で「大きい仕事をやってやる。だから一番大きい会社に行って、そこで社長になってやる」みたいな人が大企業にいたかもしれないけれど、今はそういう人間はベンチャー入ったり、外資に行ったり、あるいは自分でいきなり会社を作ったり、という方向に行って、むしろ自信のない人が少しでも安定した大企業に流れる、という方向があると思いますね。大企業志向の意味が変わってきたと思いますよ。
――――多少、キャリアを気にする人も増えてきたということなんですか?
それは間違いなく、昔に比べると大企業以外のチャレンジングが、キャリアを自分で切り開いていく機会が格段に増えましたからね。
――――この本の中に出てくる言葉ですごく印象的だったのは、「幸せなキャリア」という部分です。この言葉がすごく心に刺さりました。そこで最後に、ビジネスパーソンの皆さんにこの「幸せなキャリア」を積むためのアドバイスをぜひうかがえますか。
私は「キャリアに勝ち負けはない」と思います。ただし残念ながら「幸せなキャリア」と「不幸なキャリア」はあるんですね。 結局幸せって“自分”しか物差しがないじゃないですか。ところが勝ち負けって、世の中の一般的な物差しがあって、他人と比較できて、「この人の方が勝ち」となるでしょう。だから勝ち負けのキャリアのときは、どちらが勝ちか負けか軸がはっきりしているから、誰でもそこに向かって行きやすいけれど、「幸せのキャリア」が難しいのは軸が自分の中にしかないわけです。ところがそれを「好きなことを仕事にしたい」とか、すごく表面的な部分の自分らしさみたいなものにこだわってしまう人がいる。でも、例えば自分がどういう状況のときに一番生き生きと仕事をしていられるかというのは、「こういう仕事に憧れる」といった憧れのレベルの話とは全然次元が違うんですよ。それはやってみないとわからない。主体的に試行錯誤しない限りわからないので、わかるまで仕事しないとか、表面的な部分でこだわってしまったら永久に幸せになれない確率が高い。 だからとりあえず、たまたま出会った仕事の中で試行錯誤して自分のやり方を見つけていくことが必要なんです。上司が言った、会社が言ったやり方じゃなくて、自分で試行錯誤してみて、「あっ、これがしっくりくる」というのを見つける。これを自分の「勝負能力」と言っていますが、あるいは気持ちよくパフォーマンスを出せる自分の「勝負技」みたいなものを、社会に出て最初の5年でいくつ見つけられるか、というのがすごく大きいと思います。そうすると、一歩一歩近づいていくことができる。 「キャリア」というのは、語源は馬車の「轍」ですから。つまり“来し方”なんですよ。振り返るものなんですよね。だからそうやっていけば、あるとき振り返ったときに「自分らしい、いいキャリアが自分で築けたなあ」と結果的に思える確率が高まると考えていただいたらいいんじゃないでしょうか。
――――本日のゲストは、「スローキャリア」の著者、高橋俊介さんにおいでいただきました。今回のキーワードとして、「多様化の容認」ということを考えさせていただきました。キャリアと一言で言っても、意外にも広い可能性があるということですね。お話をうかがって、あまり1つのことに突出することなく、もっと自由な発想で自分のキャリアを考えてみてもいいのではないかと感じました。本日はありがとうございました。
どうもありがとうございました。
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