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高橋俊介
キャリアコンサルタント [ キャリア ]
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高橋俊介
[インタビュー]
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キャリアショック /東洋経済新報社(2)
2006.06.25
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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自分のキャリアを自分で作るというのは、1つの能力なのです
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キャリアは頂上の見えない林の中を歩いていくような登山
【高城】 この本が書かれてから5年間、世の中に沢山ショックがあり過ぎて、どこが軸か難しくなったと思うのですが、実際キャリアを切り開いていくうえで、上手な行動パターンや発想パターンがたくさん書いてあり、あえて1つ2つこの中から発想パターンを挙げてお聞かせ頂ければと思うのですが。
【高橋】 基本を一言で言いますと、やはり一番重要なのは常日頃、仕事をしている時にポリシーやこだわりを持って仕事し続けること、だと思います。
自分なりのトレンド感、自分なりのイメージポジショニング、他の人にこういう人間だと見てもらいたいとか、なんでもいいんです。あるいはつまらないことを言えば、時間には本当に正確で、絶対に遅刻はしない人間に思われたいとか。そのようにポリシーやこだわりを持って仕事し続けることがやはり基本だと思いますね。
【川崎】 大上段に構えることなく、身近なことからでもいいのでしょうか?
【高橋】 そうですね。絶対にどんな困難があっても逃げないとか、あるいは絶対最後まできっちりとクオリティの高い仕事をちゃんとするとか、なんでもいいんですよね。
やはり自分なりのこだわり、ポリシー、価値観、トレンド感を持つ。何かそういうものを2、3持っていて、それによって日々セルフコントロールされ、それに基づいて仕事していれば、10年先の明確なゴールがなくても振り回されないけど、それがなく受身で日々仕事していると振り回されてしまうのです。
【川崎】 イメージポジショニングやそういうこだわりを明確に持ちつつ、今現在の仕事に立ち向かったら、これはこうではない方がいいのではないかとか、こうあるべきではないかということがどんどん見えてきますか?
【高橋】 どうですかね。ある意味キャリアは、山に例えれば富士山のような登山ではなくて、もっといろいろ尾根が入り組んで、林の中を歩いていくような登山だと思うのです。富士登山は登山口にいる時から頂上が見えますよね。
【高城】 そうですね。
【高橋】 1合目、2合目、3合目と全部切ってあります。ところがそうではない普通のハイキングに行く時は、最初頂上が見えないですよね。とりあえず登らないと永久に見えないですから、しばらく登って試行錯誤していくと、フッと突然小高い小さい見晴らしのいい所に出て、そこで「あっ、こういう道、俺を来たんだ」、「あっちまでつながっているんだ」、「あの頂上かな、とりあえず行くのは」と言って歩き出すと、また林の中に入ってしまう。だからそうやっていると、何年かに一遍フッと先が見えて「これだったんだ、やりたかったものは」というものに出会う。
29歳、30歳の辺りは結構偶然も多いと思うのですが、そこまで試行錯誤してこなかった人には永久に見晴台には辿りつけない。でも見晴らせないとスタートしないのなら、永久に進まないですよね。
自分で切り開く力をつけていかないと厳しい時代
【高城】 世の中はだいぶ変化はしてきて、転職だけではなくて起業やフリーという多少キャリアが広がりつつある中、キャリアショック」が始まった頃に比べて、試行錯誤を始めている若い人が増えてきたような気がします。
実際に高橋さんはいろいろな方とお会いすることが多いと思うのですが、この5年間で変化を感じることはありますか?
【高橋】 まず社会情勢からいうと、一番大きいのは、本の構想の準備段階だった90年代の後半は、日本で「あの企業は絶対にやらないだろう」と思われた大企業までがリストラを決行した。むしろバブル崩壊直後よりも90年代後半がものすごく効いていると思うのです。そういう暗いムードの部分があって「キャリアショック」という言葉もあるのですが、この5、6年でだいぶ景況がよくなってきたと思いますね。
特にこの2年ぐらい人材マーケットがよくなってきました。チョイスも広がり、現実的にいろいろな選択肢がより多くの人に見えてきていると思います。しかしながら、やはり変化が激しいですから、いつ誰に「キャリアショック」が起こるかわからないという状況は景況感がよくなっても変わっていないと思います。
【高城】 そうですね。
【高橋】 むしろもっと激しくなっているかもしれない。
【高城】 いろいろなことを考えながら生きていかなければいけない時代になってきた気がしますね。「キャリアショック」が出版されたのはちょうど2000年で、今度は文庫になってまた出版されますね。
【高橋】 そうですね。
【川崎】 店頭に並ぶのが今月末ぐらいですよね。
【高城】 さらに6月に日経新聞から「人が育つ会社をつくる−キャリア創造のマネージメント」を出版されましたけども、この6年間の変化の中で伝えたいことの変化は何かあったのですか?
【高橋】 今回の本は、実は個人向けというより会社向け、人事の方々へ向け執筆しました。この5、6年のさまざまな変化の中で、日本の組織は若い頃、ただその組織の中で仕事しているだけでなんとなく育ってくるという、組織の人材育成力みたいなものが明らかに落ちてきていると私は思っているのです。
もちろんこれは若い人だけの問題ではないのですが、20代の若い人達に結構疲弊感があったり、やらされ感が強くなってきたり、単純に成果プレッシャーが高まったというだけではない、いろいろな原因がそこにあるのだと思うのです。それについて今回はフォーカスを当てて、本を出してみました。
【高城】 そうしますと、個人にだけではなく、むしろ企業の組織を預かる人間に対してのメッセージでもあるということですね。
【高橋】 そうですね。やはり個人自身も当然こういう前提で動いていかなければいけないので、そういう話も入っています。個人自身もそういうことをよく理解したうえで、自分のキャリアをどう作っていくのか考える機会になれば、と。
今までのように先輩の教えを従順に一生懸命聞いて、先輩上司が後輩を一生懸命「こうやってやるんだぞ」と教えても、「こうやってやるんだぞ」と言っていること自体が、教えている時にはもう陳腐化している時に、それをただ素直に受けて、考えずにやっているとえらいことになる。だから個人も自分で切り開く力をつけていかないとますます厳しいし、逆に組織側も教えるのではなくて考えさせる形の部分をもっと強めていかないと、この変化の激しい時代に若い人は本当にかわいそうですよね。
【高城】 そうですね。
【高橋】 例えば中途採用ひとつ取ってみても日本は中途採用をずいぶん増やしてきましたよね。だけど新卒の育て方、ゼロから真っ白な新卒を上司や先輩が指導して育てるやり方は、世界に冠たるものが過去あったわけですけども、中途採用も育てなくてはいけなくて、その育て方が日本企業にやはりなじんでないのでしょうね。
例えば女性でもいつ結婚して、子供作って、休職、退職するかわからない。そんな長い目で見て育ててもとを取れるのかと思ってしまう。外国人を雇ってもいいけど、どうせ辞めるのではないのかとなった時に、どうやって育てていいかわからない。過去の発想の延長では育てられない。いろいろな問題を抱えていますよね。だから是非上司の人、育てる立場の人に読んで欲しい本です。
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