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菅谷義博
旅行情報ドットネット株式会社代表取締役社長 [ 営業 ][ マーケティング ][ インターネット ]
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菅谷義博
[インタビュー]
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ロングテールの要は「自動化」にある(1)
2007.05.13
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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「常識」はすでに古くなった――― ものづくりの立場から考える新時代マーケティング
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ゲームがしたくて学んだプログラミング
---本日のゲストは、東洋経済新報社から刊行されました「80対20の法則を覆す ロングテールの法則」の著者、菅谷義博さんです。
よろしくお願いします。
---「ロングテールの法則」についてお聞きする前に、ご経歴の中で「13歳の時BASICと機械語によるプログラミングを独学でマスターされた」とありますけども、この当時はまだパソコンもない時代ですよね。その頃に興味を持たれたのは何かきっかけがあったんですか。
もともと機械は好きだったんですが、一番の動機はゲームをやりたかったんです。いわゆるテレビゲームですね。当時はパソコンではなくマイコンと言っていて、プチマイコンブームみたいなものがありました。背景としては、ソフトバンクさんから「OPC」という本が出たり、月刊「アスキー」が創刊されたり、そうしたパソコン黎明期というか、ちょっとしたブーム的なものがあったはあったんです。 僕もゲームをやりたいなと思っていたんですが、ゲームはお金がかかるじゃないですか。そんな時、マイコンを買って自分で作ればゲームがいろいろやれるらしいぞ、と聞いて、「その方がいいな」と。
---それで、マイコンの世界に入ったと?
ええ。ただマイコン自体は高い。それで、親に「買ってくれないか」と言ったら「テストでトップになったら買ってあげる」という話になったんです。当時、成績が悪かったものですから、親は絶対ムリだと思ったんでしょうね。その時は僕、すごく勉強しました。大学受験の時よりも勉強して、たぶん人生で一番勉強しましたね。そしたら、本当にトップになっちゃったんですよ。人間やれば何でもできるもんです。それで、親も渋々買ってくれました。5万円ぐらいのパソコンだったんですけどね。松下電器が初めて出した、JR100というパソコンでした。
---当時は、そんなに安かったんですか。
結構、安いのがありましたね。テレビにつなげるタイプのマイコンで、すごい目が悪くなりましたよ。
---それから、どうやってプログラミングを習得されたんですか?
マイコンにかなり詳しいテキストがついていたので、それ見ながらとか。田舎に住んでいましたから、周りにテキストがなくて、あっても技術者が読むような分厚い難しい本でした。そういうのを見ながらちくちくちくちく勉強しましたね。プログラムも、あまり時間もなかったものですから、授業中に授業を聞かずに大学ノートに書きながら勉強したので、成績がすごく下がりました。そんな感じで勉強していたらできましたよ。やっぱり、人間やれば何でもできますね。
“切り捨てない”マーケティングの時代が来た
---菅原さんの経歴というのは、ベースには“ものづくり”があると感じます。今のお仕事でもそうですが、マーケッターというより、むしろものづくりから入っていらっしゃるような。
ええ、そうですね。実は最後にお話ししようと思っていたんですが、次回作も予定は決まっていまして、次は技術者向けのキャリア形成に関する、技術者のキャリア戦略をテーマに書く予定なんです。おそらく1年後ぐらいになると思いますが。僕もベースはやはり、そういうところにあるんです。マーケティング的なものって、どちらかというと予言みたいなもので、ベースはやはりものづくりにあるんですね。
---まさにエンジニアというか、設計者というか、ものづくりの方が書いたマーケティングの本だなと思いました。
そうした考え方でもってマーケティングをやると、こんな感じになるんですよという、そういう本ですね。
---読ませて頂いて、インターネットのマーケティングをする一般的な方とは、少し考え方が違うと感じました。そもそも、ものづくり系の方が「ロングテールの法則」という本を書くきっかけは何だったのでしょう。
すごく有体にいうと、販促なんですけどね。商品の販促です。「eMplex CRM」というマーケティングソフトの開発責任者をしていまして、そのブランディングをというのもありました。それから考え方というのを、きちんとお客さんと社内に伝えたかったというのもありますね。 マーケティングのソフトというのは、結構難しい仕組みなんです。そもそも使い方もワープロソフトなどと違って、こういう考え方のもとで使ってください、ということをきちんとご説明しないとわからないところがあるんですね。なので、それがわかるような本を書いた方がいいかなと。 それから、既存のマーケティングの本をたくさん読んで勉強しましたが、どこか違うな、というのがあったんです。
---それは、どういうことですか?
マーケティングの世界って結構遅れているんですよね。いまだに50年前の世界の話が通用したりしていて。でも私は、インターネットがこんなに普及した今、やるべきことが変わってきた、という思いがあったんです。 例えば、今までの考え方ではどちらかというと優良なお客さん、よく買ってくれるお客さんに絞り込みなさい、というのがメインだったんです。でも、コミュニケーションコストが非常に下がってきているのに、なぜ切り捨てる必要があるんだろうという思いがあって、それをきちんと伝えたいと思っていたんですね。そこで「ロングテール」という言葉がポンっと出てきたので、「あっ、これはすごくいい」と思って、その時にパパパッと「これは本になるな」と。それで、このタイトルで企画を持っていったんです。
---タイトルで「あなたの常識が今日から変わる」とありますが、事実マーケティングの活動からいうと、逆張りになりますよね。
そうですね。マーケティングで言えば「80対20の法則」といって、2割の商品で8割の売り上げを占めるという法則があって、「残り8割の商品は捨てなさい」となるんですね。しかし、逆に「その8割も大事だよ」といっているんです。
---「コミュニケーションコストが下がった」というのは、どういうことですか?
テレビCMもそうですし、ダイレクトメールでもそうですし、電話でも、あるいは営業マンが直接営業に行くのでもそうですが、基本的にはお客さんの数が増えれば増えるほど、コストがかかる世界なんです。「従量制のコミュニケーションコスト」という言い方をしますが、それは結局、大きな会社の方が絶対有利だということなんですよね。お客さんをたくさん取るためには、たくさんお金が要るというロジックですから。
---それが変わってきたと?
そうです。インターネットの世界ではお客さんを獲得する、あるいはお客さんと接触し続けることに関して、ほとんどお金が要らないわけですから。全くゼロではないですけども、非常に安くで済むとなると、逆にこれまで収益が上げられないばかりに意識して削っていたお客さん、あるいは削っている商品を、そのまま取り込むこともできるのではないかと。 今までなら、1年間に1円しか収益を上げられないお客さんは切っていたわけです。そこを1円だけでもいいから取っていく。1人から1円しか取れなくても、1億人集まれば1億円でしょう。今までは、1社から1億円上げる、1人から1億円上げるためのお客さんを捕まえてくる方が、効率がよかったわけですけども。
---「2割に」あたる優良のお客さんということですね。
そうです。でも、それが全部自動化できるんであれば、1人から1円ずつ取って1億人集めれば1億円ですよね。極端な話すると、そういうロジックなんです。
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