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保田隆明
ワクワク経済研究所LLPパートナー [ 経理・会計 ]
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保田隆明
[インタビュー]
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起業としての競争力をつけるために金融の知識を身につけよう(2)
2007.02.11
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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外資系に対するプレミアムがつき過ぎていて、かっこいいイメージが一人歩きしている
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「1年が3年に値する」と言われるぐらい労働時間は費やす
高城 投資銀行というテーマでお聞きしたいのですが、投資銀行という言葉が世の中で一般的になり、大学生が普通に就職活動で選ぶようになったのはここ数年だと思うんですね。
保田 そうですよね。本当に時代が変わったなと思いますよね。それこそ私が外資系証券にいた頃、企業に訪問して「こんなことしましょう」という提案を持って行っても「そもそもあなたの会社はどちらの会社ですか」ということから始まっていた時代だったのです。それが今や名前を言えば大体どこの証券会社もわかるようになっていますし、市民権を得たなという感じはしますね。
ちなみに保田さんが最初に就職をされたのは東京のリーマン・ブラザーズ証券という、まさに外資系のど真ん中の会社ですが、当時はそれほど知名度がなかったのですか。
保田 当時は学生の間でも知っている人はそんなに多くなかったと思いますね。
高城 仕事ぶりはどんな感じのお仕事でしたか。
保田 仕事はこの本の中に書いてあることがそのままですけども、「1年が3年に値する」と言われるぐらい労働時間は費やしましたね。朝は正直遅いですが、マーケットサイド、株や債権のトレーディングをするとか、営業マンの方々は朝がめちゃくちゃ早いんですよ。でも私がいた投資銀行本部は企業に対してのM&Aや資金調達のアドバイスをする部隊で夜がとにかく遅いんですね。エンドレスなので家帰って1回寝ちゃうと起きられないので、大体9時半ぐらいに出社して毎日明け方までやるみたいなそんなノリでしたね。
高城 なぜ夜になってしまうのですかね。
保田 提案というのは答えがないんですよね。提案内容をどんどんよりよくしようとすると「あっ、これも調べよう」とか「あっ、あれも入れよう」とかいろいろ思うわけですよね。そうするとほかの証券会社や投資銀行もいろいろな優秀な人たちが提案内容を競うわけで、よりよくしていこうとしていくとエンドレスになってしまい、どうしても夜遅くなってしまうと。あとはとにかく提案の数自体が多くて、追いつかないというのがありますよね。
高城 それだけハードということですけども、時間的にも中身も濃いということですよね。
保田 そうですね。
高城 実際に外資系の金融機関で働いた自分がいて、国内にも金融の会社はいっぱいあるから、やはり仕事のしかたが違いますよね。
保田 そうですね。たぶん人数が少ないというのがあると思うんですね。先ほど申しました投資銀行というのは法人向けのビジネスに完全に絞っているので、そもそも人数が少ないですけども、スタイルが違うかもしれないですね。
高城 あとは働き方の違い。処遇やオフィスの環境もだいぶ違うような気がしますけど。
保田 そうですね。処遇は、給与面という意味ではもちろん悪くはないと思いますね。ただ時給換算するとファーストフードでバイトしているより安いかもしれないですね。
高城 えっ、そんなにですか。
川崎 それだけ労働時間が長い。
保田 そうですね。新入社員の頃はですね。もちろんどんどん給料は上がっていきますので、そうなってくるとさすがにファーストフードのアルバイトよりも時給が低いということはなくなりますけども、1年目はそんなものでしょうね。
川崎 なるほど。体を壊したりする人も出てきましたか。
保田 それがあまりいないんですよね。不思議なんですけどもね。
川崎 よかった。
給料が高いというのは将来性がないということの裏返し
高城 最近新卒で外資系の金融機関、特に投資銀行に行きたいという人が増えた気がしますよね。
保田 そうですね。
川崎 ボーナスがいくらいだとか、お給料の面だけが耳に入ってきますね。まだ何も知らない学生は、やはり飛びつきますよね。
高城 我々はこの20年間、外資系の変遷をずっと見ているからなんとなくわかる部分もあるんですけど、最近の学生や若い人たちが外資系のこういう金融機関に飛びつくという傾向は保田さんから見てどのように感じていらっしゃいますか。
保田 私もこの業界で学んだことは非常にたくさんあり、悪くはないと思いますし、入ると皆さんそれなりに楽しめると思うのです。ただ「よくわからないけどとりあえず給料よさそうだし」ということで行ったところで、あまりおもしろくはないかもしれないですよ。そもそも給料が高いというのは将来性がないということの裏返しだと思うんですよ。将来性がないというのはどういうことかというと、定年までその会社で働く人がいないわけで、もちろん退職金は出ないですし、クビになるリスクも背負っているわけで、そことの見合いですよね。
高城 向いてる、向いてないというポイントはあるのですか。
保田 どうでしょうね。僕は根性だと思っているんですけどね。
高城 根性。
保田 ええ。
高城 なんか不思議ではないですか。外資系というと合理的にやっている感じがあるけど根性なんですかね。
保田 やはり仕事は根性ないとできないですよね。
高城 外資系の方というと何ですけど、投資銀行の方とお会いすると思うのは、やはりすごく時間の使い方が上手。忙しいからですかね。
保田 そうですね。必然的に自由な時間が少なくなるので、それはあると思いますね。
川崎 効率がよさそうですよね。
高城 逆に遊ぶ時のメリハリがすごいんですよ。遊ぶ姿を見るとやはりすごいなあと。そのメリハリがすごいなあと思うけど、どうですか。
保田 おっしゃっている通りだと思いますね。特にアメリカ人はそういう感じがするではないですか。やはりオンオフの切り替えがうまいなと思います。
高城 今後この本を読んだ方で投資銀行という仕事にすごく興味持つ方がきっと増えると思うので、逆にいうと日本の企業が頑張っていかないとどんどん優秀な人が、松坂くんだけではなくて優秀な人材が取られてしまうような気がしますね。ちなみに今回は女性ですけどね。
川崎 そうですね。女性の志望する人が増えるかもしれないですね。だって、何人かのチームで企画を提案して、億単位のお金が動くんですよね。
保田 そうですね。やはり買収だと、何百億円単位のディールの話になりますので。
川崎 それは、ちょっと鳥肌が立つような経験ですよね。
保田 そうですね。最初は「おー、すごい」と思うんですけど、そのうち麻痺してくるんですよね。極論を言うと300億円と300円はあまり変わらないみたいな。
川崎 本当ですか。
保田 そういう感覚になってきますね。
高城 だって目の前に現金、積まれているわけではないから。
保田 そうですね。
高城 提案書の質やクオリティがきっと違ってきているとは思うのですが、それがある意味ですごいとこだと思うのです。
川崎 どういう戦いなのでしょうね。すごい提案同士の、すごい人たちでのプレゼンテーション。
高城 いろいろと考えて、それはもうバトルでしょう。
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