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重茂達
経営サポートサービス代表取締役 [ キャリア ]
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重茂達
[インタビュー]
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35歳までに必ずやるべきこと/かんき出版(2)
2006.03.05
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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若いうちは目先のことを考えずに まずは何事も一生懸命にすることが大切だと思います。
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若いうちは目先不利でも前向きに取り組もう
【主藤】 本では奥が深いことが背景にありながら日常的なことが書いてあるのですが、川崎さんは読んでみてもっと聞きたいことがいろいろあったのでは?
【川崎】 いっぱいありました。個人的なのですが、最近自分より若い人がまだ働き始めたばかりなのに、「今の仕事がちょっとおもしろくない」など自分の中にではなくて環境に文句を言う人がいて、そんなことを思い巡らしながら本を読んでいたら、「やればできることは山ほどある」、「桁外れの努力が本当の努力である」、また「成果が出るまで続けること」という項目。
たぶん運を引き寄せるために重茂さんが実生活の中でされてきたことだと思うのですが、すごく大事なんだろうなと思いました。
【重茂】 そうですね。若い方にいつも私は「とにかく目先のことを考えてはダメ」と言うんですね。例えば「給料があまりよくない」とか、「今やっている仕事自体があまりおもしろくなくて自分がやりたいこととちょっと違う」とか、そういう目先のことを考えてはダメです。若い時はとにかく何でもいいから自分で吸収して自分の将来のために自分自身を鍛え上げる。そういう時期ですから、若い時に目先のことを考えていたのではその人間は大成しないと思うんですね。
私が25歳でIMSに入った時に採用してくれたイギリス人の社長は私に「給料、3万円だよ」と言いました。3万円の給料はその当時の25歳の男性にとってごく普通の給料なんですね。高くもなければ安くもない。ただし社長は「どんなに残業しても1円も払わないよ」と言ったんです。私は「構いません」と言って会社に入りました。事実、会社に入ってから誰もいないので自分で何でもかんでもしなくてはいけないという状態で、毎日、真夜中まで仕事。土曜日も日曜日も毎晩夜中まで仕事。だから残業代を計算したら、大変な金額になるんですね。
でも私は残業代が出ないということに対して不満に思ったことはないし、一言も不平を言ったことがない。なぜかというと、こんなにたくさんのいろいろなことを短期間に一生懸命覚えることができる。こういう境遇は自分がお金払って「やらしてくれ」と言っても、なかなかやらせてもらえない。それを給料もらってやらせてもらっているので、嬉しいなと思っていました。
これは絶対自分の将来にとって役に立つと思っていましたから、すごく喜んで楽しんでやっていたのです。だからそれが全然自分に対して苦痛にならない。3年後には英語もちゃんと使えるようになって、外資系のエグゼクティブとして仕事ができ、部長というポジションに就いた。その原動力は目先のこと考えなかったことですよね。だから目先のことだけ考えて、残業代が出ないから適当に仕事やろうなんて思っていたら、決していい「運」は自分でつかむことができなかったはずです。
【川崎】 ついつい不平不満を言ってしまいますよね。
【重茂】 だから目先のことを考えてはダメなんですね。とにかく若いうちは自分の将来のことを考えて自分のためになることならば、目先自分にとって不利であってもとにかく喜んで前向きに取り組んでいかなくてはダメだと思うんですね。
量をこなせば、質も上がってくる 【川崎】 小さな会社だと「これ、自分の仕事ではないのに」と思うようなこともありますよね。例えば営業の人が経理をやらなければいけなかったり。そういう時も「これができるんだ」と思えるように変えていった方がいいということですかね。
【重茂】 何でもやること自身は経験になるわけですよね。「長時間労働するのはバカだ」と言って、なんとかスマートに時間内で仕事を収めて「頭を使って利口にやろうよ」と言う人がいますけれども、私はその考えには反対ですね。そういうことを言う人であまり大成した人を見たことがないです。
成功していく人達はみんな一生懸命、真面目に目の前のことに必死になって取り組んでいくんですね。そのようにやることによって何事をやるにも短期間で上手になっていく。僕はいつも「量は質に転化する」と思っていて、量をこなした人はどんどん上手になって質が上がってくる。スピードも速くなるし、質も上がってくる。量は質に転化するのだから、量をこなすことを嫌がってはいけないと思うんですね。
【主藤】 なるほど。確かに量があまりにも多過ぎるとどうしてもそれに見合う短期的なリターンを求めてしまいがちですよね。
このようなお話がいくつも本で紹介されてあるのですが読者の方から結構大きな反響があったのではないですか?
【重茂】 そうですね。読者の方から「人生の指針を得ることができた」とか、「生きる勇気がもらえた」というお手紙頂いたり、あるいは結構年配の方が「これは部下の指導に非常に役に立つ」とか、「部下達に読ませたい」とおっしゃってくださったり。
【主藤】 ちょうど35歳までの年齢層を部下に抱える上司の方が。
【重茂】 そうなんです。ある会社の専務さんが「部下全員にこれを読ませました」と手紙を下さったりね。
【主藤】 ありがたいですね。
【重茂】 その後、お礼の手紙を出したら、私が経営のコンサルティング的な仕事以外に全くボランティア的な「経営支援研究会」という経営者のための勉強会をやっていて、その会に来て下さったり、「あの本は私も、今でも部下に朝礼なんかやる時に使ってます」と言って下さったり。
【主藤】 結構幅広い反響がありますね。サラリーマンやOLの方はもちろんですが、経営者の方にもこの内容はいいですね。
【重茂】 そうですね。私は経営者の方を前にして講演をする時に、もうかなりの社会経験のある方達ですから、その方達に「こういう生き方をしなさい」というのはちょっと失礼なので、「皆さんの部下を育てる時にこういう気持ちで部下を指導して下さい」というような切り口で講演をします。経営者の方々にとっては、部下を指導する時に使える考え方だと思います。
【主藤】 重茂さんはいろいろなご経験をされているので、全てうまくいってきたような印象を受けがちですけれども、本を読んでなおかつ今のお話を聞くと全てがうまくいったわけではない。
【重茂】 そうですね。
【主藤】 本の最後の方に書いてありますが、40歳の時、決してうまくいかなかった事業がありましたね。
【重茂】 そうですね。40歳から45歳までの5年間ですけどある仕事に取り組んでいて、うまくいかなくてものすごく苦労しましたね。
【主藤】 5年間、売り上げがゼロだったんですか?
【重茂】 そうなんです。
【主藤】 本当にゼロだったんですか?
【重茂】 本当にゼロだった。
【主藤】 100円も儲からなかった。
【重茂】 1円も儲からなかった。どういうことかというと、病院向けのコンピューターのソフトウエアをアメリカ人が「アメリカで作る」と言って聞かないわけ。アメリカの会社で、アメリカ本国の500病院が使っている素晴らしい病院向けのソフトがあり、日本向けに焼き直して日本に移植するというのがこの仕事だったんですね。
だけど「そんなバカなことやめなさい」と僕は散々言ったんですよ。日本のレセプトというお化けみたいな複雑なシステムはアメリカにはないので、「そんなのアメリカ人がその内容もわからないのにアメリカで作るなんてバカなこと、絶対やめろ、日本でやるしかない」と僕は散々言ったんだけど、彼らは聞かない。「この元のソフトを知っているのはアメリカ人しかいないんだから、アメリカでアメリカ人が作るしかないんだ」と言って彼らは聞かないわけですね。
散々一生懸命協力してやろうとしたんだけど、結局とうとうできなかった。その間に日本では僕がどんどん営業をしていましたから、契約をもらってしまうわけですね。ソフトウエアができたらインストールして、端末を150台入れるというような契約をもらってしまう。契約書だけはできているんですよ。ところが「ものができたよ」と言って日本に持って来て、ハードウエアインストールし、ソフトウエアインストールし、「さあ、使って下さい」と言って使ってみると、ソフトが動かないんですよ。
「動かないじゃないか」、「ダメじゃないか」、「あれができないでしょう」、「これができないでしょう」、「こういう機能がないでしょう」と言われて、アメリカへ持ち帰って1年間かけて作り直して、また日本へ持って来て入れる。「さあ、使ってくれ」と言っても、またダメで、それを2回も3回も繰り返し、その挙句「もう、いい加減にしろ」と言われて、契約が全部破棄になってしまった。ソフトが動かないですから1円ももらえないわけですよ。契約書だけあってもインストールできず、ソフトウエアが動かないのですから1円ももらえない。
【川崎】 でもその間に費用は結構出ていますよね。
【重茂】 もう大変です。社員が60人ぐらいいましたから。しかもそのうち20人ぐらいアメリカ人で、アメリカからに日本へ来ている人たち。「病院のことやそういうソフトウエアのインストールを知っているのはアメリカ人しかいない」と言って、アメリカ人をどんどん日本へ送り込んでくるので。
【主藤】 なるほど。今のお話に比べると、僕らが日常辛いなと思っているようなことがいかに恵まれているかということがわかりますね。
【川崎】 小さく見えます。
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