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ケビン・D・ワン
ワトソンワイアット・コンサルタント [ 経営 ]
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ケビン・D・ワン
[インタビュー]
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ニワトリを殺すな!/ 幻冬舎(2)
2005.11.13
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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個人の持っている創造力を組織として活かすことは重要だと思います
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会議で誰かを責めたくなってしまったら
【主藤】 この本の一番最初のページといいますか、帯のところに“「創造」のための教訓”として“失敗を奨励せよ”、“商品は絶対に嘘を言わない”それから“人の心を知れ”と3つ書いてありますけれども、この“「創造」のための教訓”も、本田宗一郎さんの思想や哲学に相通じるものがあるのでしょうか?
【ケビン】 そうですね。哲学といっても広いので、絞ってお話を書いた方がいいと思いまして。そうすると日本の再生という中では、やはり世界に負けないものづくり、サービスづくりをこれから作っていかなければいけない。 決して日本人というのは、よく言われるように、創造力がないわけではなくて、世界的にも非常に創造力があると思うんですね。ただ、その個人の持っている創造力を組織として活かすことがすごく下手な国だと思うんですよ。
【川崎】 組織自体とか、国自体が(個人を)活かせない状況にあるということでしょうか?
【ケビン】 そうですね。それは先ほどの挑戦する人を叩いていくような文化に対してちょっと問題提起をしたかったんですね。
【主藤】 なるほど。ここで1つ、コツを是非、ケビンさんに教わりたいと思うんですけれども、ついつい何か会議の席や、それ以外の場合でも誰かがミスをした時につい責めたくなってしまいますよね。
【川崎】 誰に責任があるか、追求しちゃいますよね。
【主藤】 でも(責任を)追求していると、解決するべき大きな問題や、本来、みんなで向かっていくテーマに向かうことができなくなってしまうわけですよね。だから、ミスをした人を責めないでおこう、責めない方がいいとなりますよね。でも、ついついその人を責めたくなってしまう。そういう時に、責めないコツというか、心構えみたいなものは、何かございますか?
【ケビン】 誰かが発表する場面がありますよね。私も意識しているんですけれども、発表に対して瞬間的に応えないようにしているんですよ。 つまり、まず発表を聞いたら、少し言葉を飲むと言うと変なんですけれども、グッと押さえて、必ず(発表者に)聞く質問というのは、Whyなんですね。
【主藤】 Whyというと?
【ケビン】 なぜ、そうしたのかとか、その理由とか。あとHowですよね。どうやってそのプロセスをたどったのかということです。そこで、要は手を抜いたのではなくて、真剣にWhyを考えた末にこれをやっただとか、方法論としても色々と考えた末にこの方法論を打ったとか、これはやはり挑戦をしているんですよ。 そうならば、決して責めるのではなく、そのWhyのところで「もう少し別な視点はないのか」だとか、Howのところで「別なやり方はないのか」ということを能動的に考えていくようにしてるんですね。
【主藤】 誰かが発言した時、ついつい何かを言いたいと思っても、まずは言葉を飲んで、グッとこらえてみようと。これが1つの秘訣なんですね。
【ケビン】 そうですね。瞬間湯沸かし器にならないということです。
【主藤】 なるほど。でも言われてみると、そうですね。ついつい、「何でそんなことになったんだ」というのは、すぐに反応してしまう時が多いですよね。 そこで、なぜかということをまず聞いてみるということが1つのコツなんですね。
【ケビン】 ええ。もう1つは、何て言うんですかね。会議に臨んだ時の上の立場にいる人達が「(部下の)欠点を見てやろう、見つけてやろう」という心構えを持たないということがすごく重要だと思うんですよね。
【主藤】 上司の方が、ですね。
【ケビン】 私にしてみても、部下に対してですよね。自分より下の立場の人間との会議の時は、「欠点を見つけてやろう」という心構えの人って、結構いらっしゃいますよね。その心構えではなくて、さっきのような話なんですよね。つまり出されるアイデアに対して「出来るようにするためにはどうしたらいいのか」と考え、「自分の今まで持っている経験やノウハウで出来ることはないのか」という心構えで会議に出るということが、すごく重要だと思うんですね。
上司からミスを責められたら 【主藤】 年齢も上である人ほど、あるいは人を指導する立場である人ほど、こういう心構えはしっかりと持っておかないといけないんですね。 一方で自分より年上の人や目上の上司から責めらてしまった場合や、理解のない上司に一方的にミスを責められた場合は、落ち込んでしまいますけれども、そういった時の心構えというのは何かありますか?
【ケビン】 難しいですね。それは簡単ではないと思うんですけどね。私が勤めていた前の会社というのは、ニワトリを踏み潰してきた会社なんですね。
【主藤】 そうなんですか。
【ケビン】 会社も倒産したんですけれども、ポイントは1つですね。私がやってきたことは、聞き流す。
【主藤】 上司に責められた時は、聞き流すと。
【ケビン】 上司が自分の失敗を責めているときは、アドバイスでも何でもないので、そこで命令があったとしても、それには一切聞かない。
【主藤】 先ほどもケビンさんもお話された、成果主義の名の下に効率化が追求されたり、リストラが進行したりして、会社の業績がアップしてきているとはいっても、1人あたりの仕事量が膨大に増えているということをよく聞きますよね。 そうすると、精神的にもどんどん追求いつめられて、仕事を押し付けられたりして、上司からもなかなか認めてくれなくて、ちょっとしたことでも責められることが多いと思うんですね。それで今、精神的にも参ってしまうというサラリーマンが多いんですけれども、聞き流すことが一番のポイントになってくるんですね。
【ケビン】 そうですね。私がやってきたことは、聞き流すということです。
【主藤】 変に生真面目に捉えない方がいいということになってくるんですね。
【ケビン】 これは日本のサラリーマンの方にとって、難しいかもしれないんですけれども、1つはその会社には永久にいなければいけないという考え方を取るかどうかだと思うんですね。 その考え方が自分の中から取れると、さっきのように聞き流すということが平気になるんですよ。
【川崎】 なるほど。
【主藤】 会社なり、今のポジションなり、仕事の内容にこだわりをちょっと捨ててみようという発想なんですかね。
【ケビン】 そうですね。
【主藤】 上司にご機嫌を伺わなければいけない状況であれば、なかなか聞き流すだけというのは、難しいですもんね。
【ケビン】 本当に嫌だったら辞めるぐらいの覚悟ができているかどうかということがすごく大切だと思うんですね。でも、まだ日本の労働市場だと、そういう文化がやはりまだまだ弱いところがあるので。
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