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御立尚資
BCGグループ日本代表 [ 能力開発 ]
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御立尚資
[インタビュー]
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戦略「脳」鍛える/東洋経済出版社(2)
2005.09.18
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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実践と理論を組み合わせてこそ、 よいアイディアがうまれるでしょう。
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世界一流のコンサルタントの考え
【主藤】 このボストンコンサルティンググループの中核的なノウハウであるこのインサイト、直観を活用した経営戦略、経営コンサルの手法を明かすということ。
これ、怖くはなかったですか。経営を教える立場のプロとして実は直観なんだよというのは、怖くなかったですか。
【御立】 例えば、ピアニストというのは、ブーニンでもいいですし、他の方いろんな方、フジコ・ヘミングでもいいんですけれども、みんな自分の世界を持っていますよね。自分流があると。でもその下には裾野として、芸大のピアノ科を出たようなレベルの人がいると。その裾野のレベルの方がどんどん増えるのは、我々にとってもいいことだし、我々のお客様にとってもいいことだと。それぐらいに思わないとやってられないなと。これはちょっと後から考えた開き直りなんですけども、そういう議論は中でしましたね。
もっと言うと、我々も自分達だけですごいものを作る時代は終わって、お客様の中の優秀な人と一緒になって作り上げる。そうすると実行される確率が高いわけですね。でもお客様にもアートの能力を少し高めてもらわないと、議論が噛み合わないんですね。そこのためにも使ってしまおうという割り切りですけどね。
【主藤】 なるほど。これ、本当に今まで明かされていなかった部分、分野だと思うんですけども、読者の方からどういった反響がございましたか。
【御立】 これは、2通り頂きましたね。1通りは今まで勉強してきたのは何だろうと。その堅い科学の部分を、読みたくない本を山ほど読んできたのでもっと早く言ってくれよというふうに言って下さった方と、もう1つは、なるほどこれはわかってきたいう方で知識だけじゃなくてその知識を有効に活用する頭の使い方の本なんだなというものです。
ところが本を読んだだけでは、なかなかそれを鍛えるのはこれまた難しいということがわかりました、ということをおっしゃって下さった方もいて、そこから先はご自分なりに考えていただいたり、どうしても必要があったら我々を雇って頂ければいいんですけども、やはり入り口としてここをわかって頂ければ、違う頭の鍛え方ができるなというふうなお答えを頂いているというふうに、僕は受け止めているんですけどね。
シャドーボクシングという頭の使い方 【主藤】 今、いろいろなお話をしてきたなかで、やはり直観という言葉が出てきましたけれども、この本の中ではインサイトという単語でそのことを表現されていらっしゃいますけども、この直観とインサイト。これは、やはり若干ニュアンス的に違うものなのでしょうか。
【御立】 厳密に言えば、インサイトというのは素晴らしいアイデアそのものだけではなくて、そのアイデアを生み出す力、能力も含んだ広い定義なんです。日本語にしづらい、言い難いところは、インサイトというカタカナで表現しておいた方がいいかなということで、直観プラスアルファぐらいのつもりで使っていますけどね。
【主藤】 その直観プラスアルファのインサイト、このインサイトを構成する要素といいますか、中身というのはスピード、それとレンズ。そういう表現で本の中でご紹介頂いていますけれども、このインサイトを高めると経営能力が高まる、強い戦力がつけると。他者にない戦力ですね。
その元が実はスピードとレンズなんだよということなんですけども、これについてご紹介頂けますか?
【御立】 スピードはよく、特にこの番組のリスナーの方なんかはビジネスについてよくお考えでしょうから、仮説検証ということはお聞きになったことがあると思うんですね。何か仮説を立てて検証すると。
これ、どこからきたかというと小売業からきてるんですね。イトーヨーカ堂とかセブンイレブンの鈴木敏文さんは、この大家のような方ですけれども、小売業っていうのは仮説検証業なんです。仮説検証をやりやすいんです。
例えば物をある棚に置きます、2倍の量を置きます、棚の高さを変えますと。それによって売れ行きが変わるので、立てた仮説を検証するのが3日もあればできるわけです。
【主藤】 すぐにフィードバックがくる。
【御立】 ええ。ところが例えば鉄鋼業で仮説を立て、高炉を3つ作るとこれ、3日で検証するわけいきませんし、そんなリスクは取れないんで、普通のそういう消費者とのインターフェイス型以外のビジネスの場合は、仮説を立てても検証するスピードを上げるっていうの、難しいんですね。
それは頭の使い方で、私はシャドーボクシングって言うんですけれども、「ああだったらこうだって、自分がこうやったらこんなことが起こるだろう」と。でもそうすると「敵はこうパンチを出してくるだろう」というような知的なシャドーボクシングをすることで、理論的に仮説検証のスピードを上げていく。これが実際はユニークなアイデアに到達するわりと早道だっていうのが、スピードなんですね。
【川崎】 そうか、試すわけにはいかないですもんね、ビジネスですからね。
【御立】 ええ。
【主藤】 一方で、レンズというのは。
【御立】 レンズはそういう一番最初の仮説を出すのが、実は難しいとおっしゃる方がいるんです。そのために我々戦略コンサルタントというのは何をやっているかというと、レンズを付け替えるんですね。
例えば遠くを見る時というのは近眼用の眼鏡をかけたり、もっと遠くだと遠眼鏡、望遠鏡を使ったり、もっと近くだと顕微鏡を使ったり、あるいはわざと光を屈折させるプリズムを使わないと潜望鏡って見えませんよね。こういう遠くを見たり近くを見たり屈折させたりというのを使い分けるのに、頭の使い方だとユニークなアイデアでものすごく広く考えたり、グーッとフォーカスして考えたり、ひねってアイデア飛ばす時に付け替えないで1つの眼鏡をずっとかけている人がすごく多いんです。これ、頭の使い方の癖って、私言うんですけども。
それを我々は典型的には9つの、3種類掛けるそれぞれ3で9つのレンズがあって、そういうものの見方をいつも使い分けれれば、ユニークなアイデアが出る確率が高まる。そうすると仮説を先ほど言ったように検証してどんどん回していけばいいわけですから、戦略につながると。これを整理したというのが、レンズですね。
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