|
|
御立尚資
BCGグループ日本代表 [ 能力開発 ]
|
|
|
|
御立尚資
[インタビュー]
|
戦略「脳」を鍛える/東洋経済新報社(1)
2005.09.18
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
|
|
実践と理論を組み合わせてこそ、 よいアイディアが生まれるでしょう。
|
経営戦略に不可欠なインサイト
【主藤】 主藤 今回は、東洋経済新報社から出版されております、4万部を突破して既に5万部に迫る勢いのベストセラー、『戦略「脳」を鍛える』の著者でいらっしゃいます、御立尚資さんにお越し頂きました。御立さん、今日は宜しくお願いします。
【御立】 宜しくお願い致します。
【主藤】 御立さんは、多方面でご活躍されていらっしゃいまして、経営コンサルタント会社のボストンコンサルティンググループ代表でいらっしゃいます。そればかりか最近、テレビ東京のワールドビジネスサテライトのレギュラーコメンテーターとしてもご活躍されていらっしゃいます。今日はこの『戦略「脳」を鍛える』という本について、いろいろとお伺いしたいと思います。
実はこの本は、一見するとビジネス書ですけども、実は堅苦しい、数字を語るようなビジネス書ではなくて、どちらかというと目に見えない不思議な力がビジネスで大きな影響を及ぼしていると。この本の中では、インサイトという言葉で表現されていらっしゃるんですけれど、一体このインサイト、どういうふうなものなんでしょうかね。
【御立】 よく将棋とか囲碁に例えるんですけれども、名人クラスの方って、いつも戦っている時に同じやり方、しませんよね。
でも最初は定石を勉強するわけで、でも定石を完全に知っている人同士が戦ったら、同じことをやりそうなものですけれども、そのうえで自分の直観で違うやり方をやりながら、例えば今であれば羽生さんと佐藤さんって確か王座戦を戦っていらっしゃると思うんですけども、定石を超えないと本当に一流になれないというのが将棋と囲碁の世界ですよね。
経営の世界も同じで、どこかの本に書いてあるような、これが経営戦略ですってことをやって勝てるんだったら、こんな楽なことはないんで、自分もいれば敵となる競争相手もいると。
みんな定石を知ったうえでもう1つプラスアルファを足してユニークなことをやって勝とうとする。こういうことが大事だと思ったものですから、そこのユニークな部分を作る。これは実際には宙からユニークなものが浮かんでくるわけではなくて、何らかの形でそのインサイト、日本語でいうと直観とか、直観力になりますけれども、こういうものを鍛えることでその確率が高まるはずだということで、そこの部分だけに特化した本を書いたんですね。
アートと科学で経営は成り立っている 【主藤】 今、直観という言葉が出ましたけれども、直観というのはビジネスの世界では排除される分野、そういうことは考えてはいけないというふうに一見否定されがちですが。
【御立】 ビジネスをお勉強する学者さんは排除したいんですね。学者っていうのは当たり前ですけれども、先生方がやっていらっしゃることは意味はもちろんあることで、理論を作ってそれを直観ではなく、全部データで証明する。これが例えば経営だったら、経営戦略論とか、戦略学という学校で教えられるようなものですね。
でもそれって過去に起こったことを定型化して証明しているんで、最先端で競争している人は、どんどん先の部分を出すと。これはどちらかというと先ほどの直観、これはアートの世界なんですけども、科学とアート両方が要る経営の中のアートの部分で競争は行われていると。
例えば、この本の中にも書いたんですけども、よく考えると信長が例えば三段の鉄砲隊を並べて、武田の騎馬隊と戦ったと。これは、歴史的に見ると、本当にあったのかと言う人もいるんですけれども、でもそれは今までになかったアートなんですね。
【主藤】 アートというのは、芸術。
【御立】 ですね。やっぱりそれを考え付く芸術的感性で、絶対無敵だと言われた武田の騎馬隊に対して三段並べていけば、一段目が打ちます。火縄銃が、次が火をつけている間に普通は騎馬がついちゃうのにすぐに後ろの人が準備すると。何秒か毎に、今だったらストップウォッチでしょうね。昔だったら何か太鼓を叩いて、何秒毎に交代しろと。これだけで勝てるようになってしまうと。
こういうユニークなものっていうのは、後から定石になるんですけれども、最初に考えた人が直観で考えるわけですよ。だから経営も全く一緒で、その時にその直観を鍛える術があれば、勝てる確率が高まると。ところが学問の世界の戦略論というのは、そこは全部できるだけ排除して、説明しやすいものにすると。ここにすごいギャップがあるんですよね。
【主藤】 今、御立さんの口から直観という言葉が何回か出たんですけども、御立さんは京都大学を卒業されて、世界何十ヶ国にネットワークがあるボストンコンサルティンググループの代表を務めていらっしゃる、いわゆる科学的なビジネスをある意味、一端を極めた方。もちろん理論的な部分も含めてですね。
であるにもかかわらず、直観が実はそれを上回る経営にとって大切なものだというお考えというか。
【御立】 これは、この本を書くに至った背景となったのですが、そこにすごくギャップがあるなと思ったことに加えて、後輩を育てなきゃいけなくなったんですね。1人では、それなりのことしかできませんから、できるだけ戦略を、おもしろい戦略を作れる人間を作ろうと。
そうすると、世の中にある勉強をどんどんさせても、先ほどの科学の部分のスキルは身に付くんですが、アートの部分が身に付かないんですね。ところが経営者の皆さんは、よくわかっておられて、直観があって、その直観が正しいかどうかを検証するのが科学だと。
検証する能力だけあったってコンサルタントなんて役に立たないよって、皆さん経営者の方はおっしゃるので、アートの部分は自分は何となくできてきたんだけども、それを言語化して他の人もできるようにするにはどうしたらいいんだろうかと。
簡単に言えば、後輩コンサルタントに対して、ものを教えるために苦労したり、工夫したものを本に書きました。言い方を変えると、BCG(ボストンコンサルティンググループ)のノウハウが一部出ちゃってると。そういう本だと思いますけどね。
|