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小松俊明
外資系エグゼクティブリクルーター [ 時間管理 ][ キャリア ]
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第11回 丁寧だけど遅い仕事、早いけど雑な仕事、上司はどちらを好む?
2007.09.25
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あなたは慎重派?それとも完ぺき主義? 実は、こうした表現は、「仕事が遅い」ことの言い訳に使われていることが多くあります。いうまでもなく、仕事には正確性が求められます。しっかりとした事前調査も必要です。性急にことを進めるよりも、慎重に検討して、できるだけ完ぺきに近い形で仕事に取り組めれば、それに越したことはありません。 特に時間に余裕があるときや、自分ひとりで仕事を進めればいいときなどは、十分納得のいく仕事をするためには、マイペースにスケジュールを組んでも、問題はないでしょう。ただ多くの場合、どんな仕事にも相手があるものです。つまり、相手のスケジュールに気を配る必要があるのです。 たとえば、通常の場合、あなたの上司やお客さんは、たいがい「せっかち」ではないでしょうか。あなたが情報収集に時間をかけている姿を必ずしも評価するのではなく、どちらかというと、「もっと早く仕事をしてよ」というように、あなたの仕事の遅さにいらだっていることが多いようです。 ではどうしたらいいのでしょうか。 それは「仕事は雑でもいいから早くやる」ように心がければよいのです。 家のリフォームの相談に行ったことがある方は思い出してください。建築士の方は、あなたの希望をヒアリングして、まずはラフプランを書いてくれますね。詳細の設計に時間をかけても、あなたの意見がかわるかもしれませんから、建築士はまずはできるだけ早くラフプランを提示してくれるのです。そのラフプランを見ながら、あなたの想像力は膨らみ、どんどんアイディアが増えていきます。 仕事を早くしてもらうことでありがたい例は、ほかにもたくさんあります。 車を車検に出す際に、お願いすれば担当者は簡単にざっと見積もりを事前に出してくれます。交換部品があったり、予期せぬ修理は完ぺきには予測できないけれど、走行距離や車の外観の状態、そしてドライバーからのヒアリング等をもとに、営業マンは事前に見積もりを出してくれます。これも仕事は雑だけれども、早くてありがたい例です。 もっと身近な例もあります。 デパートの地下の食品売り場に行くと、サラダなどの量り売りがありますね。人気のあるお店ほど、いつも人が並んでいます。その量り売りをする人の、手作業の早さにはいつも舌を巻いてしまいます。200グラムを注文すると、サッと手を動かして目分量で盛りつけます。213グラムですが、すぐに僕らにこう聞いてきますね。「少しオーバーですが、よろしいですか。」おそらくたいていの人は、首を縦に振ってしまいますね。「200グラムって注文したのだから、ぴったりになるまで調整してよ」、そこまでいうお客さんはまずいません。つまりここでも、仕事は雑でも早いほうが、お客さんの満足度は高いのです。 いくつか、生活の中でよく遭遇する身近な例をご紹介しました。 では職場ではどうでしょうか。 あなたの上司は、まずは仕事の早さを要求してくるはずです。もちろん誤字脱字だらけ、データもむちゃくちゃというのでは、タイムマネジメントや効率性を語る以前の問題なのだと思います。 ただ、このような経験をしたことのある方はいないでしょうか。 「明日までにあげておいて欲しい」と後輩にお願いしていた仕事が、前日の夕方5時くらいに仕上がってきたのです。あなたはどう思いましたか。「仕事早いな」「まだ時間あるから、これを使って、自分のほかの仕事も終わらせておこうかな」 このように、相手の期待より早く仕事を終えた場合、相手に与える印象がとてもいいのです。すばらしい内容の仕事を仕上げるには、それ相応の実力が必要です。もちろん実力をつけるための日々の努力が大切ですが、仕事のスピードを上げることは、相手の評価を高めることに対して即効性があるのです。 もちろん仕事が速いのはいいとしても、やっぱり「雑」ではダメじゃないの、という声も聞こえてきそうです。ここで思い出して欲しいのです。 「前提条件は刻々と変わっていく」ということ。 つまり、仕事が早く終わり、予定よりも時間にゆとりが生まれた場合のほうが、余裕を持って前提条件の変化にも対応できます。万が一、足りない点に気がついた場合も、修正するための時間の余裕があります。デキるビジネスマンは、他者評価をあげるために、常に相手のスケジュールを意識しているものです。自分が一緒に働く人、たとえば上司やお客さんの時間を短縮できるのは、あなたの仕事の取り組み方ひとつにかかっているのです。 「仕事は早くて雑でいい」と申し上げましたが、一つの教訓として、最後にもう一つ大切なことをお伝えしておきたいと思います。それは仕事が早い人で仕事ができると評価されている人の多くは「振り返り」に多くの時間を割いているということです。 たとえば、塾の先生たちによると、成績の良い子供の特徴は、早く問題を解けることですが、やはりきれいな文字を書ける子、計算の過程を丁寧に書き残せる子、そして問題を見直す子だそうです。つまりスピードが早いのと同時に、学んだことを振り返るなど、勉強への取り組み方が丁寧な子ほど、成績は安定するとのことです。子供たちの世界でも、早く問題を解くことで失敗しないためにも、振り返りや見直しが大切なのでしょう。 ビジネスマンにも良いヒントになりそうです。
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