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小阪裕司
ビジネススタイルエバンジェリスト [ マーケティング ]
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小阪裕司
[インタビュー]
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失われた「売り上げ」を探せ!/フォレスト出版(2)
2005.06.19
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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ワクワク系実践者の人生観とは、 儲けること自体が目的でなく単なる手段なのです。
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人間の消費行動には動機付けが不可欠
【主藤】 では、儲かる会社を支える、もう1つの理由は何ですか?
【小阪】 私達がよく使う言葉でお客様の動機付けといいますが、例えばお酒が今日100本入荷したから今月中にはこの100本売り切りたいと思った時に、仮に1本のお酒を1人の人間が買うとすると、お酒を100本売りたいということは100人の人間にどう行動してもらうかということですよね。
【主藤】 買うという行動をしてもらわなければいけません。
【小阪】 ですが、さっき申し上げたように、多くのビジネスをやっている方は、行動よりも商品の方に焦点を合わせます。
しかし、人間の行動には必ず動機付けが不可欠ですから、まずは動機付けないといけません。
【主藤】 人を動かすための仕組みというか、仕掛けですね。
【小阪】 ちょっとわかりやすくいうと、よくこれ講演でする話ですが、皆さんなかなかお客さんがお金を使ってくれないと嘆きますが、その理由はどうしてだと思いますか。
不景気だからとか、出版業界ですと活字離れとかいろんなこといいますが、そうではなくて、こういう人間の観点から人軸で見ると、お客さんがお金を使ってくれない理由はたった1つで、使う理由がないからです。
【主藤】 お金を払ってまでも欲しい物がないと。
【小阪】 やや近い見方ですね。ただもう単純に、使う理由がないから使わないということです。どうしてそれを買わなくてはいけないのかわからないんです。隣の人も持っているからではもはや理由になりません。
例えば、昔は隣の人もついにクラウン乗ったかと思い、俺もいつかクラウンに乗ってやるという「いつかはクラウン」という名コピーがありました。そういう時代背景があれば、動機付けというのは非常に簡単だと思うし、一般の人が同じような動機を持っているということもいえるかもしれません。
しかし、これだけ個人の生活が多様化してくると、放っておいても勝手に動機付けられて、自分の会社なり店に足を運んだり、問い合わせてお金を使ってくれるかというと、非常に難しいですよ。
スーパーから学ぶ、お客さんへの動機付け 【主藤】 高度経済成長といわれた頃には、お客さんが勝手に周りをみて、動機付けされてお店に買いに行くということが多かったのですか?
【小阪】 やはり生活も不便だったでしょうから。例えば、手から自動に絞れる洗濯機があったり、1つの成功する生活ビジョンみたいなものも、一戸建てや自家用車と非常に共通していたと思うんです。 けれども、もはやそういう時代でもありません。
そうすると、個別企業は自分達のお客に対して商品を売りたい、あるいはサービスを利用して欲しいということです。しかも、自分達が思う通りに行動してもらいたいのであれば、行動する理由を教える、つまり動機付けないといけません。
これが、ほとんどなされていないんですよ。スーパーに行っても「秋刀魚1匹130円」と書いてあるだけで、これだけでは動機付けられません。
【川崎】 具体的にそういう時は、どうしたらいいんでしょうか?
【小阪】 私の本「失われた「売り上げ」を探せ」にもありますが、例えば「秋刀魚1匹130円」「秋刀魚1匹150円」と書いてありますよね。食品スーパーの社長さんに聞くと、130円ばかり売れるらしいですよ。店側はそれをどういうふうに理解しているかというと、「不景気だから安いものが売れる」というんです。
けれども、私の意見は違っていて、どうして20円高い方の秋刀魚を買わなければならないかわかりません。つまり私流にいうとメッセージの出し方では、お客さんが20円高い方の秋刀魚を買う理由がわからないんです。
【主藤】 理由をちゃんと伝えていないと。
【小阪】 そもそも伝えるという発想がないんですね。そこで社長さんに、「お客さんにきちっといろんな情報を伝えようよ」と言いました。すると、「そういう情報を伝えられる商品を扱っている人はいいですよ。しかしうちの店は特許も必要ない、ただの食品スーパーですよ」と言うんです。
例えば「○○という料理には20円高い方が向いているよ」と言われたら、1つの理由になります。そこで実際にその社長さんにも店頭で聞いたんです。彼は、本当は20円高い方を買わなければならない理由を知っていますからね。
すると、「それは大きさが違うからですよ」と簡単に言うんです。ところが大きさをよく見ると一緒です。というのは、みなさん大きさを聞かれると長さだとイメージするでしょう?
【主藤】 はい。
【小阪】 ところが、秋刀魚は違うんですよ。背中の厚みなんです。そして、手袋をつけて取り上げてくれて「20円高い方が背が厚いでしょう?こっちの方が脂ののりがあって、うまいんですよ」と言われました。
【川崎】 知りませんでした。
【主藤】 それは秋刀魚という商品のものの見定め方ですね。
【小阪】 ある意味そうですね。お客さんという人軸から見れば、20円高い方の秋刀魚を買う理由です。それが結局動機付けになります。
この話を講演ですると、大体みんな高い方の秋刀魚を買うに至りますから、僕は非常に秋刀魚業界に貢献していると思います。
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