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米山公啓
医学博士 [ 仕事術 ][ 時間管理 ]
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米山公啓
[インタビュー]
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脳科学的に見た、ゆとりを生み出す時間術(2)
2007.11.21
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ストレスもドーパミンも時間管理に活かす方法 ――“脳”から考えたまったく新しいビジネススキル
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□仕事は8割でやめるべし――脳と時間のつながりとは
―――今回の本は、基本的な考え方ではビジネス書ということになりますか?
そうですね。時間の管理技術ということですから、もちろんそれは、いろんな仕事に関係する人もそうでしょうし。結局「脳」でみた時間の管理術という、僕は神経内科が専門ですから、脳的な時間管理という視点で書いています。
―――時間管理と脳の繋がりというのは、あるんですか?
一番わかりやすいのは、締め切りですよね。今日中にやらなきゃいけないとか、今週中とか,時間を切られると結局ストレスがかかる。やらなきゃいけない,逆にいうとそのストレスは意欲に繋がるんですね、「がんばろう」という。だから、ストレスと時間管理は非常に微妙な関係なんです。あんまりそれが長いと、例えば年内中でいいですといったら、あんまりそれは意欲が沸いてこないですね。今日中、今週中と打ち切られるとやる気が出る。それはどうしてかというと、脳のなかのドーパミンというやる気ホルモンみたいのが出てくるんですね。そういうものを上手く使ってやると、仕事が早く終わるし、いい仕事もできる。時間管理と仕事の遂行線みたいなものは、非常に平行した関係なんですね。
―――本を私も読ませていただいたのですか、そのなかでも、脳というものはすごく先のことよりも目の前にあることをハッキリと決めると判断がしやすくなる、と書かれていましたが、実際にそうなのですか。
それは最近の行動経済学のデータだと、そういう、目先のことにやっぱり人間って行動を決定してしまう。それがいいときもあれば、悪いときもあるということですね。もうちょっと長期的な展望で本当は動かないといけないんですけど、どうしても目先のことをやってしまうと、そっちを先にやってしまう。それも悪い場合もあるし、いい場合もあるということですね。
―――時間管理というと、先のことを決めてそこから具体的に行動を決めていくほうがベースのように思いますが、今回の本では、目先のところをちゃんとやらないと、前に進めないと感じました。
そうですね。ドーパミンという見方からすると、ドーパミンというのが目的をクリアしてからしか出てこない。短期的な今日の目標設定をして、それをクリアして、それが満足感になるわけですね、「遂行した」という。それをすると、「成功体験」というのですが、やったという、できたという快感ですね。それが記憶になると意欲に繋がる、また次に繋がるという、そういう関係です。
―――我々がよくビジネス書で読む「時間管理」の発想と、違うように思いますが。
まあ、だから脳科学的にはそちらの方がたぶん効率がいいということですね。ただ、発想力とかそういう話になると、ちょっと違うんです。そういうものと全く関係なくパッと思いつくという、これはまさしく右脳的な直感ですよね。そういうものは、脳科学ではハッキリわかっていないんです。なぜそういうことが思いつくかわからないけれども、ただ、そういう部分でブレイクスルーしていくところもあるので、普段のルーティンの時間で動いていく部分と、突発的にポッポッといく部分を両方もっていないと、いい仕事はできないと思いますね。
―――現実的な行動をスムーズにやっていくためには、目先の行動がちゃんとできるように行動管理、時間管理をしていくと、よりスムーズにいくということですか。
そうですね。というか満足度も高い。
―――時間管理のなかで、翌日とか将来に何か積み残しが多いと、ストレスになってしまうのでしょうか。
意欲を持続させるという意味では、「8割遂行術」といいますか、8割で止めろという研究があるんですね。というのは、全部をやってしまうとさっき言った満足感で終わってしまうので、翌日またゼロからやらなきゃいけないですよね。そうすると結構、意欲を高めるのが大変なんです。だから8割くらいで意識的に止めてしまうんです。そうすると、まだ終わっていないという意識、緊張感があるので、翌日は残り2割やればいいということで、仕事が非常にしやすい。だから8割でリレーしていくというのは、仕事を続けていくにはいいことなんです。
□医学書から小説まで――発想はすべてつながっている!
―――いままで200冊近い本をお書きになっているということですよね。私もたくさん著者の方にお会いしてきましたが、おそらく中谷彰宏さんに次ぐくらいではないでしょうか。
多いですね。
―――どのようなきっかけで本を書くようになったのですか。
最初は看護雑誌の連載エッセイだったんですね。医療エッセイを書いていて、それを単行本にして、それが少し売れたというところから始まっている。そこから大手の出版社から依頼がきたりして、書き下ろしのいわゆる医療エッセイをずっと書いています。それもちょっとこう能天気な、ギャグエッセイに近い。医者の現状を書くというスタイルで書いていたんですね。そこから今度は、医療の現場の問題点などをガンガン書き始めて、途中で小説書いた。医療ミステリーを書いています。
―――小説ですか。
ええ。たぶん10冊くらい書いていると思います。1冊はテレビドラマ化にされたりしていて。
―――ドラマ化されたんですか。
でもどちらかというと、小説よりもたぶんエッセイの方が私自身、書くのが向いているという気はあったんですけど。途中で脳の本を書いた。それが脳ブームのちょっと前だったんですね。それが非常に売れて、そこから脳関係の著書がぐっと増えて、脳の活性化だとか使い方だとか、認知症の予防という医学系の部分もありますけど、それでずっといままできているという感じです。
―――脳や健康というと書店では健康や医療の書棚に並ぶことになると思うのですが、今回の本はビジネス書のコーナーになりますよね。そうした本を作ろうと思われた理由は何ですか。
やっぱりビジネスでも脳を使うわけだし、時間管理も必要だし、医学的・科学的な面で時間管理とビジネスのやり方というか、脳の使い方をやったらどうかな、というのもあった。
―――医学博士、と書いてあると読者はたぶんびっくりすると思います。それから、日々の行動には確かに合理性があるようで、あまり分析してないですから、ビジネスパーソンは何となく、直感とか、誰かがやっているから真似してみよう、という考えが多いと思うのですが、こうして理詰めで説明されると、ちょっとびっくりしてしまうのでは?
ええ。もちろん全て人間の行動がわかっているわけではないですけど、いま脳科学がだいぶん進歩してきて、なぜそういうことをするかとか、そういうことをしたとき脳がどうなっているかとか、わかりつつあるわけですね。その辺りをもとに書いているんです。まあ、僕自身が非常に、書いていくうちに常にいろんな発想になっていく。ある原稿を書いていると、次の本のネタを考えちゃったりするわけ。タイトルが思い浮かんだり、本当にこう、パッと思いついたりして。そういう何か新しいことを考えていくのが好きなんです、基本的に。医者ではありますけど、それ以上に、例えば趣味の客船に乗るなんていう、クルーズ取材もやっているんですね。それは全く違う世界なんだけど、そこから入ってくる情報もすごく面白い。だから、いろんな自分の行動を繋ぎ合わせて本を書いているという状況なんです。
―――一つ一つの本については別々のテーマだけれど、実際には繋がっていると?
繋がっています。結局僕自身が、医者というのが基本にあって科学的な部分と、そこから繋がってく発想ですよね。それをこう、うまく繋げて、結局は自分の好きなことをやっているといえばそれまでなんですけど、自分の視点で書いているという感じですね。
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