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森田英一
自律型人材育成コンサルタント [ キャリア ]
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森田英一
[インタビュー]
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「若手流出時代」をどう乗り切るか!(2)
2007.11.14
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若手が辞めない会社、若手が育つ会社とは―― 「自律型人間」に社員を育てるマネジメント法
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□辞めさせないためにもっとも重要な「上司の役割」
――――会社を辞めたいとか自律していないという感覚は、職場で若手社員を見ていてわかるものでしょうか。どういったシグナルがあるのでしょう?
そうですね。そういう意味では、今の世代の彼らは結構焦っていることが多いです。自分の成長を焦っていたりだとか、自分が認められることを焦っていたりだとか。役に立っているという感覚を持ちたい、という焦りであったりだとか。その焦りが結構、空回りしているケースがあって、そこで落ち込む方と、空元気で頑張っているけれども空回りしているケースと、その彼らの変化、ちょっとした変化を上司の方なり先輩の方が見抜くことが求められているのだと思います。
――――難しいと思いますが、それを見つけていかないと多くの従業員が辞めてしまうわけですね。
そうですね。
――――上司の役割も大きくなるということでしょうか。
そうですね。実は『「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社』で申し上げている主要なメッセージは、管理職の方の意識を変えないと、この若手離職の問題は解決しないのではないですか、という問題提起をさせていただいているんですね。やはり部下の方を育てるとか、部下の方に関わるという意識自体が希薄になっていて、そういったシグナルを見つけられるか見つけられないかというのもあるんですが、そもそもそれ以前に、コミュニケーションをもっと取るか、深いレベルで取るか、信頼関係を構築するか、というところの意識がまず薄いケースが多いので、そこが出発点になるのかな、と思うんですよね。
――――この3年目で辞めるという現象は、ずっと続くのでしょうか。
3年目は、1つの人生においてのサイクル的にはよくある話で、3年目の浮気とか、石の上にも3年とかですね、3年というのが区切りの時期だというのもあるかと思うんですね。仕事も最初はがむしゃらに、2年目で慣れてきて、3年目で自分で一通りできる感覚が出てきてという、そのサイクル上で若手社員が次のキャリアを考えるということは、そういう意味では1つの新陳代謝の考え方、自分の成長サイクルの考え方というところでは、これからも続くのではないかな、と思うんですね。海外を見てみても、人材の流動性はどんどん高まっているんです。日本ではそれほど今まで人材の流動性が高くなかったのが、やはりいろんなフィールド、自分の可能性ということを考えて流動化する時代というのは、これはもうある種不可避だろうという風に私自身は捉えています。ただ、その中で本当に自分に合った会社を見つけたり、はたまた辞めたりするよりは、自分が今のいる会社で活躍することのほうが良かったのに、というような方も中にはいらっしゃる。そういう方が、本当に自分の人生としてマッチした人生を歩めるような生き方が、これからできるようになっていくといいな、と思っているんですけども。
□10年、20年先を見据えた教育コンサルティング
――――森田さんは人材に関わるお仕事をされていますが、人がたくさん辞めるということは、つまり採用のビジネスは広がっていると思います。一方で、事業を変えていらっしゃるとお聞きしたのですが、何故この時期にあえて採用ではなく違った領域に入っていこうとされたのですか。
そうですね。私が今経営しているシェイクという会社は、採用の領域と教育の領域、企業の研修をやる領域と両方あるんですけども、今ですね、どちらかというと教育の分野に力を入れています。というのは、やはり採用のマーケットというか市場というのは非常に大きくはなっているんですけども、私自身は成長というところにすごく興味があるんですね。その社員が生き生きと働く、成長する、そのプロセスをずっと見ていたいというのが、私の思いとしてありまして、そのためには研修という形だとかコンサルティングという形で、その組織の文化を変革していくといったほうにやりがいを感じるのと、その中での彼らの変化がずっと継続的に追えることへのやりがいですね。そういう意味では、私の問題意識、趣味的な部分がそこに現れているのかもしれません。
――――今、次回作として構想中のテーマがありますか。
この『「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社』は、先程申し上げましたように企業の人事の方とか経営者の方だとかを主にターゲットして書かせていただいたんですけども、やはり若手の社員に直接、もっと君達やれるよ、頑張れるよ、もっと可能性あるんじゃないの、と。自分らしさって何だろうね、というところのメッセージを出していきたいということと、あとはこの彼らを育てる管理職の方々、非常に悩みを今持たれていると思うんですね。いろんな葛藤を持たれている。自分達は育てられてきていないのに、どうやって育てたらええねん、と。しかも最近の若手は宇宙人みたいやぞ、と。ようわかれへんぞ、と。コミュニケーション取りにくいぞ、と。そういうのは非常にあると思うんですけども、ちょっとしたコミュニケーションの仕方とか、彼らのことをもっと知ることとか、そういうことで解決できることがすごくあるかな、という風に思って。そういった領域と、あとは私自身、実はですね、学校教育に対しての思い入れというか問題意識も非常に強くて、そういう学生さん向けの本も書いていきたいな、と思っています。
――――学校教育というのは、大学ですか。
そうですね。実は私、前職でもやっていたんですが、大学だとか高校のコンサルティングをやっていたんですね。シェイクを立ち上げてからも、新しい大学の学部を作るコンサルティングとか、専門学校の学科を作るコンセプトメイクから、学科の科目のカリキュラム作りとか、そういったこともお手伝いさせていただいてまして。
――――大学の学部を作るのですか。
そうです。新しい学部を構築するとき、じゃあどういう学部を作りましょうか、と。これから10年先20年先の世の中を見据えた学部はどんなのでしょうか、というコンサルティングをさせていただくという、ちょっと変わった仕事なんです。
――――そういうお仕事があるというのが驚きです。
あまりないですけどね。かなりレアだと思います。
――――それはご自身の中でライフワークみたいなものなんですか。
そうですね。ずっとやって、今までもやってきていますし、これからもやっていこうと思っていますし。将来的には理想の学校みたいなものを作りたいな、という思いはありますね。
――――次のテーマとしては、若手の方に対してメッセージを発信していこう、と思われているわけですね。
そうですね。実は今年の4月にも1冊出させていただいたんですけども、それから更に今書き進めているものがいくつかございます。
――――本を書かれたことによって、これからお仕事の展開にも変化がありそうですか。
そうですね。やはり若手離職に対しての本を書かせていただいたことで、社会問題として広がりを見せていったことの自分自身も実感値もあるんですね。そういう意味では、これから日本がいろんな社会問題、人に関する、人組織に関する社会問題がこれから出てくると思うんですけども、そういうことに対して私なりの問題提起をどんどんしていきたいな、という風に思っております。
□頭で考える前に、とにかく行動してみなくてはわからない
――――最後に、森田さんから若いビジネスパーソンの方に向けて、これから活躍していくために今のうちに準備しておいたほうがいいこと、若いうちにやっておいたほうがいいこと、そういったものをアドバイスするとしたらどんなことを伝えますか。
自律するためには自分自身を知ることですね。自分自身を知るためには、自分の興味のあることにとことんチャレンジしてみることだと思うんですね。それでちょっとムズッと「これやりたいな」とか「あれ、これちょっと気になるな」ということにどんどん飛び込んで、そこで自分がどういう感情を抱くか、というその行動と振り返り、その中で自分の軸というものをどんどん作っていって、自律していく。そういうようなサイクルになると思いますので、興味があることにどんどんチャレンジをして行動していっていただけるといいんじゃないかな、という風に思っております。
――――興味を持ってまずやってみる、ということですか。そうすると、そこから軸ができると?
そうですね。若手の方とお話していてよくあるのが「やりたい事がわからない」「夢がない」「自分は何のために働いているんだろう」というような、頭から入るケースが非常に多い。やはり最初は自分のことは行動して体感して、感情面がどう動くか。ワクワクするのか、やっぱり面白くないなと思うのか、そういった中で自分の軸を確かめていく作業、自分を見つけていく作業だと思いますので、そういったことをより意識的にやっていただけるといいんじゃないかな、という風に思います。
――――もう1つ、こんな事を勉強した方がいいということが、具体的にありますか。
そういう意味では、こういう事、というよりはその人がムズッとした事。
――――ムズッと、というのはどういう意味でしょう。
ムズムズッと、これ興味があるな、と。これワクワクッとするな、と。ドキッとするなとか、何らかの感情が動く領域をちょっと極めてみるというかですね。例えばそういう領域の本を読んでみる。そういう分野の人に会ってみる。そういう集まりにちょっと行ってみる。そういう、何か気になるスポーツでもいいですし、勉強でもいいですし、そういうことをちょっと一度踏み込んでやってみるということをお勧めしたいですね。
――――行動が第一ということでしょうか。ありがとうございます。本日のゲストは、森田英一さんでした。森田さんは今日、素敵な黄色といいますか、カラシ色のスーツでしたが、この色は会社のカラーなのだそうです。とてもお似合いでした。3年目で社員が辞めるという現象は、おそらく今後も続いていくと思います。森田さんのお話をお聞きして思ったのは、今の若い人たちの気質というものをちゃんと踏まえたうえで、マネージメントしていくこと。ですから、勇気を持って飛び込めない人がいれば少しだけでも背中を押してあげること。これによって、皆が変わってくると思いますので、できるところから少しずつ若い人たちを挑戦させてあげることができれば、3年で辞める方も少しは減るのではないかと思いました。本日はありがとうございました。
どうもありがとうございました。
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