□世界No.2セールスウーマンでも、悩み迷うのは当然のこと――――この本は、今まで出された本と反響に違いなどありましたか? 和田さんのこれまでとは違う部分を出したかったのかな、という気がするのですが。
そうですね。母のこと、祖父のこと、姉のことなど、家族のこともたくさん書きましたし、友達の恋愛話とか私自身の過去の恋愛話も書いていますから。通常、講演会でこんな話はできないですよね。裏のもう1つの私の、今ここにある私にはもう1つのドラマがあったんです。人には生きてきた自分の道、歩いてきた道、仕事の道じゃなくて、もう1個歩いてきた道がかぶさって、今の自分があるんです。でも、このかぶさったもう1個の道はあまり人にはお見せしてこなかった。そこを表現したのが今回の本です。――――和田さんは代表作である『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』など、セールスウーマンとして頑張っていらっしゃる姿のイメージが強いですが、その裏、というより別の本心の部分にこの本に出てくる和田さんがあった、という感じですか。
そうですね。売れるようになった原因は、私自身の自信のなさや、コンプレックスや、自分が生まれ育った環境の中で何かしらの発見があって、自信なく生きてきた私が売れるようになったのはこういうところで生きてきたからですよ、という感じなので、原因はここにあると思うんですけどね。――――なるほど。それではこれまで書かれた営業の本と比べて読んでみると、重なる部分があるということですね。
もちろん。――――こういう和田さんがいたから今の和田さんがあるのだ、ということがわかるということですね。読者の方にとっては、知ってビックリ「え、そうだったの」という感じでしょう。でも「共感した」という方もいらっしゃるのでは。
みんなそれが普通なんです。同じように悩んだり悲しんだりしてきたのが、普通の人なんだということですよね。――――和田さんは、女性著者が顔写真を大きく表紙に出すという、書店でとても目立つ装丁を工夫された先駆け的な方ですが、今回もすごく素敵なお写真ですね。これはどこで撮られたんですか。
うちの事務所で撮りました。――――そうなんですか! スタジオかと思いました。
ええ。事務所をスタジオにしました。バーッといろいろ付けて。――――表紙の写真を見て、「写真が欲しい」とか「送ってください」という“和田ファン”がいたりするのでは?
そうですね。待ち受け画面にしてもらったりしていますよ。――――いいですね。私もしてみようかな。
ありがとうございます(笑)。――――『和田裕美の幸せレシピ』という本は、和田さんのイメージを変えることになった一冊ではないでしょうか。出版社も新潮社という、ある意味ビジネス書というより一般書としての挑戦ではなかったかと思うのですが、仕事のやり方や作り込みの部分で何か変化はありましたか?
この本はあくまでも連載をまとめていく作業だったので、そんなに時間はかからないと思ったんです。もっと早くできると思ったんですけど、結局、一から書き下ろしをした本よりも難しかった。――――時間がかかったのはどうしてでしょう?
過去に自分が書いたもの、過去に吐き出したものって、既に過去のものになりませんか? 昔書いた本を読むとちょっと恥ずかしかったりするんです。――――照れ臭いですよね。
そう、照れ臭い。だから1年連載をやってきたものをまとめる時になって、最初のほうを見ると書き直したくなるんです。これはちょっと言い方が違うかな、と。自分が変化しているから書き直したくなる。でも、そのまま残しておいたほうがいいものもあるので、葛藤しながら全体を組み立てていくという作業が、初めての経験で難しかった。それで思っていたより時間がかかってしまったんです。□“いつも前向き”じゃなくていい! 肝心なのは切り替え方――――本のテーマに“陽転思考”というのがありますが、これはどういう意味なのでしょうか。私は初めて聞いた言葉でした。
私は“ポジティブシンキング”とはちょっと違うように解釈しているんです。でもおそらく、他の人の言う“陽転思考”はポジティブシンキングの意味だと思いますから、私の中での解釈が違うだけかと。――――和田式の“陽転思考”ですね。
通常、ポジティブシンキングというと、ネガティブなことを言ってはいけない、なんて書かれていますよね。無理と言うのは駄目、とか。――――和田式は違うと?
でも“無理”って言いたいじゃないですか。“駄目”もすごく言いたくて“あいつ嫌い”も言いたくて“むかつく”も言いたくて……。人間って素で生きていると、綺麗事ばかりじゃないところがたくさんあるんです。だけど、ポジティブシンキングのために悪いことを言ってはいけない、となると実はすごく我慢する。本当は辛いのに泣けないとか。
その点“陽転思考”は、悪いことを考えてもいいし、泣いてもいいし、怒ってもいいけれど、泣き続けるな、怒り続けるな、という考え方です。早く、1時間でも早く切り替えて下さい、ということです。事実は1つでも考え方は2つあって、1つの事実に対して“最悪に悪いこと”と“最高にいいこと”の2つを目の前に並べて、どちらがいいか自分でチョイスしてください、と。そして陽転、つまり太陽のほうに転がるように、方向性を直して下さい、という感じです。――――自分にとって辛いこと、例えば上司に怒られたとか、恋人と別れたとかいろいろありますが、それはパッと見た瞬間には辛いことでも、それだけじゃないということですか?
そうですね。例えば今80歳のおじいさんだとしたら、「あの夜あの人と別れたおかげで、今お前と一緒なんじゃ」なんて言っていると思うんですよ。――――確かに言ってそうですね(笑)。
そう、言っていると思うんです。それを80歳になってから気づくのか、翌日に気づくのかは、その人の人生を左右しますよね。いろんな方の本を読むと、仕事で失敗したあの時に感謝の心を学んだとか、あのまま真っ直ぐいっていたら自分はきっと人を傷つけるような人間になっていた、ということを、それから10年後くらいになって本で書かれる方もいらっしゃいます。でもそれを翌日に気づいていたら、きっともっと人生が変わったと思いませんか。だから切り替えは早く、は大切です。
でも必ず1つの事実の中には反省がある。失恋をしたかもしれないけど、そこで傷つくことによって自分の悪いところに気づいたり、ちょっと口数が多かったかなとか、相手に好きって言ってなかったなとか、うまく伝わってなかったなとか、反省したりしますよね。そうすると次に好きになった人とは、前の反省を生かしてうまく恋ができるじゃないですか。
仕事でも失敗したら、次はその失敗を生かして同じようなクレームを受けないように新しい商品を開発したりするなどすると思いますから、いいことだらけなんですよ。だから1つの事実から必ず“良かった”を探そう、ということなんです。(3)に続く