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神田昌典
作家/経営コンサルタント
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神田昌典
[インタビュー]
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神田昌典が時代を読む!Part2-(2)
2007.08.09
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これからの時代認識 Part2−2
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――――それではこの市場が100人だったら、というところのもう1つの重要なポイントを申し上げたいと思うんですが、このポイントが分かるとですね、実を言うと、今回携帯電話を1回目でお見せ致しましたけどもこの携帯電話がいつの時点で全く新しい商品に生まれ変わるのか、ということが分かるわけです。
これはですね、100人の村というコンセプト、100人の市場というコンセプトでは少し分かりにくい、非常に応用編なんですが、結論から言ってしまいますと、導入期即ち初めの10人までは新しい商品が出ますとその商品は、初めの10人というのは色々その商品に対して文句を付けたい人なんです。アドバイスをしたい人なんです。 「これはこういう風にやったらもっと使い勝手が良くなるよ」とか「こういうニーズを満たすべきだよ」っていう風に言いたがるんで、実はその初めの10人即ち導入期の人々、新し物好きの人は次から次へと新しい商品を買うんです。 新しい携帯を買うんです。ということはどうなるかというと、商品のライフサイクル、携帯の型変更、新しい機種が出るというスピードが非常に速いんですね。
ところが11番目から90番目の人というのは基本的には隣の人が持っているものを買うので、そしてあまり新し物好きではないので1つ買ったらそれを大切に使い続けるという人なんですね。そうしますとその11番目から90番目の人達が動く時には機種変更、新機種の市場への投入というのが段々緩やかになってきます。 ですから、新機種があまり出なくなってきたよね、という風に皆さんが感じ取ると、それはまさに成長期の真ん中だということが分かるわけです。この市場というのはまだ安定的に成長していくんだよね、今の市場に出ている機種というのは当分この機種のままなんだろうね、だったら今新しく買い換える必要はないや、ということになります。どうせ多分あまり変わらない機種なんだろう、だからデザインのちょっとした変更であるから買わなくていいや、ということでどんどん商品のライフサイクルが長くなっていきます。
そして今度成熟期に入ります。即ち91番目から100番目の人が動く時になるとまた商品のライフサイクルが早くなってくるわけです。 何故早くなってくるかというと、儲からないからそこに付加価値を投入したり、更に儲からないから付加価値を投入しても全く儲からない時代に入ってくるんでメーカーとしては必死になって新しい機種を投入するんだけれども利益があまり生じないので、その利益をまた得るためにちょっとした付加価値を付けてまた新しい機種を投入していくという、このような状況になるので、商品のライフサイクル即ち携帯の新機種の登場というのは非常に早くなってくる。
ところがこの成熟期においてライフサイクルが早い、即ち新機種の投入が次から次へとなってくると僕らのようなビジネスマンは何を予測するかというと、そろそろここで全く違ったレベルの商品が出てくるね、と。即ち携帯であれば携帯2.0が出てくるんじゃないか、とか全く新しい通信速度の携帯が出てくるんじゃないか。そういうことが予測出来るわけです。 ここが非常に重要なポイントであって、何故ならこういうことが分からないといつまで経ってもその市場のブームで、「あ、新機種が出たから次飛びつこう」とか「新機種が出たから俺も新しい新機種を開発してこの市場に投入しよう」とかそういう風になっちゃうんですけども、そういうことよりは恐らく成熟期が終わる時には新しい、全く新しい革新的な商品が出る、そういう市場になる、それを市場は求めているということが分かれば、成長期の後半辺りから次の全く新しい機能を持った携帯の開発に着手すべきだということです。もしくはその販売体制を整えるべきだということです。
こういうことが分かってくると、実を言うと身近でコマーシャルフィルムを見ていても「面白いな、ビジネスっていうのはこうなんだな」って、実はあと成長期と導入期がどの位続いたかというのはその時にまで分かるでしょうから、成長期が3年続いたということが分かれば成熟期も3年だ、と。 即ち今年から3年目に恐らく全く違った機種が出るだろう、と余裕がある人はその時から新機種の登場に向かって開発戦略、開発投資をしていく。もっと小さな話であれば初回にメンズのアンダーウエアの話をしましたけれども、メンズのアンダーウエアの素材が、テロテロの履きやすいもの、吸湿性が良いものであったりとか、そういうものが例えばブームになったとしますよね。
そのブームになって成長、成熟という期間を見ていくと、そろそろこの素材というものは人気が無くなって来るから次の素材をここで投入しないといけないな、ということが見えてくるわけで、その仕入れを努力したり若しくは自分がその開発、若しくは商品を「こんなものがあったらいいんじゃないだろうかな」ということで計算して、そこに対して今度は新しい市場を作れるようになってくるわけなんです。更に面白いのはこの商品、ライフサイクルについてはかなり細かなことが分かっておりまして、ちょうど50人目が買ったころが一番商品のライフサイクルが長くなるんですね。
ですから90番目以降の人が買う場合にはその商品のライフサイクルが3分の1になってきます。即ち50番目の人が買った時には1年もった商品も成熟期になって91人目の人が買う時にはその1年の3分の1ですから3ヶ月半位しかもたない、ということになります。 ですから、この商品って今までもったよりも3分の1のスピードしかもってないね、と思ったらそろそろ市場が大変革になるということが分かるわけです。更に我々、その数字を見ていくと分かるっていうことは今までは会社というのは2世代もつ、と言われたんですね。60年間もつ、と言われた。
ところがそれが30年間になり、そして今は10年間。30年間もった時代が市場浸透率が半分だとしますと今はちょうどその3分の1と。会社の寿命自体が3分の1しかもたなくなってきている、ということが分かるわけです。これはどういうことかというと、会社という概念自体が商品ライフサイクル、ライフサイクル上ですね、最終着地地点に入っているぞ、と。成熟期に入っているぞ、と。これから更に短く会社の寿命であるとか事業の寿命というのは短くなってきますが、もう既に3分の1になっていますから、これから起こることは一体何かと言うと、全く新しい価値観に基づく会社であるとか全く新しい価値観に基づく経済制度というのがそろそろスタートしてもおかしくないぞ、ということがライフサイクルから分かるようになるわけです。
それでは次回はですね、ちょっと初めにKISSや『サーキットの狼』の話をしてしまったために若干遅れておりますけれども、個人のライフサイクル、個人の予測の仕方についてお話をしていきたいと思っております。
神田さん、どうも有難うございました。
――――有難うございました。
『神田昌典が時代を読む』次回もお楽しみに。
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