『神田昌典が時代を読む』この番組は作家として、また経営コンサルタントとして活躍する神田昌典さんにこれからの世の中のトレンドを見通していただき、ビジネスパーソンが激動する時代を如何に乗り越えていくべきか、アドバイスをいただきます。それでは神田さん、第2回目のお話宜しくお願い致します。――――宜しくお願い致します。
さて第2回目ですが、前回に引き続き成長カーブの話をしたいと思います。
今回の成長カーブの見方は前回と別の観点からお話したいと思いますが、それはどういう観点かと申しますと市場が100人の消費者で出来ていたらどうなるだろうか、とということです。
市場が100人の消費者、そこに対してマーケティングをしていった場合にどのように市場というものは動いていくのか。これが分かるとビジネスの参入タイミング、それから撤退タイミングが分かると同時に一体いつからビジネスがブレイクして成長期に入るのか、そしていつ成熟期に入るのか。これがよく分かるんですね。
想像してみていただきたいんですけれども、市場100人しかいない、この100人しかいない市場に皆さんが何か自分の商品を投入したい、販売したいと思った時にポイントになるのが何人目の人かというと、11人目の人と51番目の人とそれから91人目の人なんですね。この3つの人が動くかどうか、というのがとても大事なんです。
例えば皆さんが新しい商品を出したとしますよね。そうすると新しい商品ですからそんなことは見たことも聞いたこともない。人というのは見たことも聞いたこともない商品は買いません。
ところがそういう商品に飛びつく人種がいるんです。新し物好きの人種ですね。その人は、初めは100人のうちの1人かもしれません。
「俺、こういう商品買ったんだぜ」って一番先に手を出す人。その人が動くと今度は次の人、すなわち2人目が1番目の人を見て「お、何お前それ買っちゃったの」っていうことで「俺も買おうと思ってたんだ」っていうことですぐ手を伸ばすんですね。そうすると2人目の人を見て今度は3人目の人が「お、良い物持ってるね。それ格好良いね。俺も買おうと思う」って言って買うんですね。
そうすると100人のうち、3人位から5人位は新し物好きの人が必ずいるんですね。この新し物好きの人はまずレッテル的には『変わり者』という風に言われているわけですけども、こういう変わり者が新しい商品にまず手を出す。トレンドセッターですね。
ですから1年目、通常市場より1年から2年先にトレンドを見つけてきてしまう。こういう人がいるんです。その中でも非常にトレンドの先を読む人というのは、先ほど言いましたように3人から5人位と私は見ているんですけども、もうちょっと広く考えますと大体10人のうち1人、すなわち市場で100人の市場だったら10番目の人までは新し物好きと考えてください。
先ほどの3人から5人というのは超新し物好きっていう人がいるんですね。この超新し物好きの人が動くと普通の新し物好きの人が、残り5人が動いてトータルで10人になる。これが導入期なんです。この導入期というのはどういう時期かというと、10番目までですよね、とするとそれはその商品が1,000円だったら1,000円×10人で1万円しか生まれないわけです、その市場は。しかも新しい物ですから製造コストがかかりますよね。それからマーケティングコストがかかって、すなわち広告宣伝をしていかないと知ってもくれない。ということでこの時期というのは非常に経費がかかるんです。
経費がかかって売上が少ない。1万円しかありませんのでこの時期というのは利益があんまり儲からないという時期になります。一般的な話ですよ。
でもこの一般的な原理原則が分かっておくといろんな異なる状況にも判断がしやすくなると思いますんで、ちょっとあまりにも基礎的な話かと思いますけども、なかなかこういう基礎的なところが分かっていない人が多いんで敢えて今日はお話しますが、逆に言うとこういう基礎が分かると直感的にビジネスの参入タイミングが分かるんで、誰でもビジネスが楽しめる、というような状況になると思います。
さてそして先ほど言いましたように11番目の人なんですけども、11番目という人はポイントだと言いましたが、11番目の人はどのように商品を買うか。
あなたが提供した新しい商品を買うかというと、10番目の人が手にその商品を持っているから11番目の人は安心して買う人種なんですね。こういう人達を日和見族、という風に私は言ってますけども、新し物じゃなくて他の人が買ったのを見て安心して買う。
こういう人種が大抵どの村にもどの市場にもどの世界にもどのクラスにもどの会社にも、こういう人種が大体80%位いるんです。ということは11番目の人から90番目までの80人、今は分かりやすく言ってますから敢えて数字は丸く収めておりますけど、この80人が一気に動くんです。
日和見ですから、新し物好きの人っていうのは情報が伝播すると言っても徐々に徐々に動くわけですね。ところが日和見の人というのは隣の人が買ったらすぐに買うんです。その隣の人が持っているのに自分が持たないことというものが非常に不安で不安で仕方がないのでそこでブームが起こるわけです。
すなわち10番目の人を見て11番目の人は買う。12番目の人は11番目の人が買ったのを見たらすぐ買う。13番目の人も14番目の人も前の人が買ったのを見てすごい勢いで買い出すんですね。そこで市場は成長するという風に言われるわけです。
こういった、他の人が良いよと言ってくれれば買うという人、これから人気だよと言われると買う人、行列が並んでるよというとそれを見て安心して買う人、こういうのが市場全体を100人だとすると80人位いるもんだからここは一気に動くんです。
そして次には恐竜と言われる人達がいまして、この人達は91番目から100番までの人。これは90番目の人が動いても「俺はそういうブームは嫌いだ」と。「私はそういうものはあまり。私は古い人間だから」という風な判断をし始めまして、91番目から100番目までの人は何があっても、地震が起こっても、天災が起こっても、なかなか動かないという人がいます。
これを恐竜という風に言うわけなんですけども、このようにどこにでもこういった3つの人種がおりまして、この人々の性格によって実をいうと市場が決まって、市場の参入タイミングが決まっている。
即ち経済というのは実を言うと人間が作っているものであって、人間が作っているということは人間の性格、人間の感情というものがその背景にあるんで、こうした人間の習性だとか感情だとかこういうところから市場を見てみると、非常に直感的にビジネスというものがお分かりになるんじゃないかな、という風に思います。
この100人の市場でマーケティングをした時にこのような3つの人種があるということが分かりましたけども、その時にもう1つ重要なポイントがあるんです。
それは10番目の人が動くスピードと11番目から90番目の人が動くスピードと、91番目から100番目まで動くスピードは同じだということなんです。これは非常に重要なポイントで、というのは100人の村で、100人の市場で皆さんが新しい商品を出して10番目の人が動くまでに3ヶ月かかりました、ということであれば11番目から90番目までの人が動くためにはまた3ヶ月かかる。即ち6ヶ月目では90人までの人が買う。そして9ヶ月目でようやく100人が買う。
こういうような条件にあるわけです。ということはどういうことかというと、3ヶ月目から9ヶ月目の間というのは急速に人口、つまり消費者が増えるわけですから11番目の人に商品を販売しようと思ってその時点で参入した会社というのは一気に80%の収益を得るチャンスを得ているということなんです。
ここが重要なポイントです。ですから導入期から成長期までのポイント、そこまでに何ヶ月、何年かかったかということが分かれば、一体いつ成長期が終わるのかということも分かるわけです。
成長期が終わりますと成熟期になります。成熟期にはもう既に様々な会社がその市場に参入していますので、そこは最後の10人の市場を10社20社が分け合っているわけですから当然のことながら1社あたりの収益は低くなってくる。そこで新たに参入しようと思っても最早食べ残しばっかり、ということになってしまいますね。
今回は100人の市場でどうやって我々がビジネスということを考えるかということでしたけども、ぜひ皆さんに知っていただきたいというのはビジネスっていうのは実を言うと人間が作っているということで、その人間というのは実は隣の人の感情、家族の中にいる人の感情、心理の動きで決まってきているということなんです。
それでは次回、実はこの話は1回目で終わらせようかなと思ったんですけど、全然終わりませんので次回も引き続き成長カーブについてお話をさせていただきたいと思います。次回はいよいよその商品、皆さんの商品がいつの時点で全く新しい商品に生まれ変わるのか、ということについてお話したいと思います。
(2)に続く