|
|
神田昌典
作家/経営コンサルタント
|
|
|
|
神田昌典
[インタビュー]
|
神田昌典が時代を読む!Part1-(2)
2007.08.02
|
|
これからの時代認識 Part1
|
――――いきなりビジネスに飛びます、話は。ビジネスのトレンドをどうやって予測するかということを言います。これが出来るようになるとビジネスの参入時期というのが非常に良く分かるんですが、例えばここに携帯電話というのがありますけれどもこの予測法が分かるとこの携帯電話がいつの時点で大革新を遂げるのか、いつの時点で技術が進化するのかということが分かるようになるんですね。ですからその方法論について今日はあと10分の間に皆さんにお伝えしたいと思います。
さて、ビジネスを予測するのは一番重要なキーワードは何か、と言うとSカーブというカーブなんですね。 これはビジネススクールに行きますと、マーケティングでもまず初めのほうで学ぶんですね。どの教科書にも、Sカーブというのは書いてあるんですが大体半ページ位で終わってしまうんです。Sカーブの本について、つまり成長カーブって言われる内容なんですけどもこの成長カーブについて半ページでとても説明しきれないんですね。
この成長カーブというのは実を言うと森羅万象。どんなところの自然界にも存在するカーブなのです。 どういうことかと言うと、必ず全ての物事は3段階を通じて成長していく。 まずは導入期、そして次には成長期、そして次には成熟期とこの3つの段階を踏むというのがこの成長カーブの考え方ですけれども、これはまさに人間が赤ちゃんのヨチヨチ歩きから始まって、そして青年になって仕事をして活躍し、そして年配になって今度は世の中に対して指導していく立場にある。さらに文化を引き継いでいく、受け渡す立場にある、手渡していく立場にあるという風に言ったほうがいいかもしれないですね。 このように必ずヨチヨチ歩きから成長しているということなんです。初めはそれがゆっくりなんですけども、それから急速に成長してスピードが速まりましてそして成熟してゆったりとまたカーブが緩やかにシフトする。これが兎の誕生数、兎がどれだけの率で増えていくかということについても当てはまるんですね。 初めはゆっくりにしか増えないんですけれども、成長期が始まると一気に増えてその後にゆっくりとまた人口が安定する。この成長カーブというようなことが分かっていると、いつビジネスに参入したら一番儲かるのか。そしていつそのビジネスから撤退したら一番痛手が少ないのか、ということが分かるようになります。
これは何も経済学者が必要なわけではなく、何もMBAを取る必要もなく、小学生、中学生、高校生誰でも分かる、ということです。何故この成長カーブが大事なのかと言うと、ビジネスで一体一番利益が儲かるのはどこか、と言いますと成長期なんですね。 成長期というのは大体そのビジネスの約8割から8割5分の収入が、年商と言ってもいいですけども、収益が生まれるという風に言われています。 とすると、導入期、成熟期というこの成長期の両脇にある時期、つまり赤ちゃんの時とご年配になった時に、どれだけの収入を稼げるかというと、100マイナス、先ほどの80から85ですから約15%から20%しか稼げない。すなわち赤ちゃんと老人は一生のうちでは稼げても10%、15%。大体それを半分で割ると赤ちゃんの場合は5%から7.5%。ご年配の方の場合も5%から7.5%ということです。
成長期を見分けてそのタイミングがバッチリの時にその事業に参入出来るかどうかというのがビジネスの成否を決めていくわけなんですね。これは残念ながら脳力じゃないんです。 優秀な経営者がビジネスに参入すると儲かるように思えて成功するように思われていますが、実を言うと優秀かどうかというのはあまり関係無くて、タイミング良くその業界に参入出来たかどうかで成否が決まってしまうということなんですね。
例えば松下幸之助さんというのは、ナショナル、松下電器の創業者でいらっしゃいますけれども彼は誰が見ても優秀な経営者ですね。ところが彼が初めに出した商品というのは、売っていた商品は電球だったんですね。どんな天才でも今の時代に電球を売ろうとしたら儲かる筈がありません。 松下幸之助さんがこの世に甦ってきたとしても電球を売っている限りは、これはビジネスは成功しない。ところがその商品ですね、これから成長期に入るという商品を見出した人というのは、これは或る意味で一度転がしたボールが山から下に転げ落ちるようなものですから、簡単に会社は大きくなっちゃう、ということなんですね。 もちろんそれだけにビジネスを集約させて述べるつもりもございません。もちろんビジネスの中にはマネジメントであるとか人をどうやってモチベーションをあげるかとか、それからファイナンスであるとか様々な分野があるんですけれども、とは言うものの一番重要なのはいつのタイミングでビジネスに参入するか、ということが大事なわけです。
この答えを申し上げますと、じゃあ成長期はどのように見分けることが出来るのか、というとですね。 まずは同じ業界、同じ市場分野で同業の会社、同じような商品を1年の間に2社から3社が同時に発表する、同時に参入する。こういう場合には1つの成長期に入った目安となります。 例えば今年ですね、メンズのアンダーウエアで次から次へと参入していく。大手がメンズのアンダーウエアに2社3社参入した、ということになるとこれはメンズのアンダーウエアというのは実は成長期に入ったのではないかな、ということが分かるわけです。 それから参入が増えますと今度は価格がダウンしますから、今までは結構デザイナーズブランドの価格が高止まりしていたんだけれども、色々な会社が参入してきたために価格ポイントがジリジリと下がってくる。これも成長期に入ったのではないかなというような目安ですね。 更に細かく市場を見ていけば、2年度連続で市場が2桁成長する。こういうような指標が見つかった時にはかなりその市場は成長期に入ったのではないかな、ということがわかるわけです。 ですからどんなビジネスに素人の方でも市場を見ていて「私が気になっていた分野で2、3社大手が入ったね、今年」っていう風になればこれからこの市場は成長期なんだ、これからその市場は85%、その市場全体その商品全体の85%の売上もしくは収益を上げていくんだということが分かるわけですから、そのタイミングをもって株に投資したり、ということも考えられるわけですね。もしくはそういった産業を見てその時に転職や就職や再就職をしておくと更に何年かは結構豊かな美味しいような状況に自分の身を置くことが出来るわけです。
さて、心配した通りKISSと『サーキットの狼』を話していたために時間がなくなってしまいましたので、もう少し私ビジネスについて話したいことがあるんですね。それが分かっていただけると、何故こういうことが起こるのか、成長期に利益が集まるということが分かるのか、それから様々な深い知識がまた分かってきますので、次回はそのSカーブ、成長カーブについてもう少し詳しくお話をさせていただきたいと思います。コンセプトは『もし100人の村でマーケティングをしたらどうなるんだ』というテーマで考えてみていただくと更に今日の知識が深まると思います。それではまた。
はい。神田さん、どうも有難うございました。
――――有難うございました。
『神田昌典が時代を読む』次回もお楽しみに。
|