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谷原誠
弁護士 [ コミュニケーション ]
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谷原誠
[インタビュー]
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「わたしと仕事、どっちが大事?」はなぜ間違いか/あさ出版(2)
2006.12.03
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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論理と感情は相容れないもの
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二者択一的な思考から解放されよう
【高城】 今回の著書のタイトルについてちょっとお聞きしたいのですが、「私と仕事、どっちが大事?」これは女性の方が男性の方に言う言葉の気がしますが、論理的な話し方の技術を伝える本をこのタイトルで作ろうと思ったのは、何かこだわりがあったのですか。
【谷原】 「なぜ間違いか」とか「これが間違いです」と直接的に本では書いてないです。このタイトルには2つ意味を込めていまして、1つは「どっちが大事?」という二者択一。世の中には二者択一的な思考が蔓延していると思うのですが、そこから解放されましょうというのがまず1つ。それからもう1つが、「私と仕事、どっちが大事?」と聞く場面というのは、論理なんてはっきり言って関係ない場面ですよね。感情だけに支配されているような場面だと思うのです。その時にあくまで論理でいくのか、感情の部分で返すのかを考えないといけないのではないかと。そういう2つの面でこのタイトルになっています。
【高城】 なるほど。弁護士のお仕事をしていくうえで、論理的でありながら二択ではないことが必要な時があるのですか。
【谷原】 それは常にそうだと思います。
【高城】 常にですか。
【谷原】 はい。まず依頼者からお話を聞く時に、依頼者というのは紛争の当事者なので、「じゃあ100万か50万か」とか、あるいは「これをやるか、やらないか」とか、二者択一的な思考に陥ってしまう。思考が硬直してしまうんですね。そこで法律の専門家として、「いや、こういう道もあるのではないですか」とか、3択目、4択目を提示してあげるのがまず1つありますね。交渉の相手方でも同じことで、相手方も「どっちにするんだ」というようなことを迫ってくるんですけれども、「それ、二択ではないのではないですか」という場面は常にあります。
【高城】 私はこの本を読ませていただいて、日常の仕事でビジネスマンとして使えるなと思ったのは、営業というよりも社内で物事を通していく時のネゴシエーションにおいてはすごく大事なことかなと思いまして、YesかNoではなくて自分のやりたいことを実現するためには代案がないとできないんですよね。そういう部分でビジネスマンが役立つヒントがあるなと思ったんですけどね。実際にこの本を出されて既に増刷が数かかっているということですけども、実際に読者の方から何か反響はありましたか。
【谷原】 私のところには直接的には知っている人からしか、反響がないのです。出版社の方にはわかりませんけど。あとはアマゾンのレビューとかミクシィのレビューとか、そういうのはやはりどうしても感情的になってしまう人にこの本というのが何らかの影響を与えているのかなという感じを受けますね。
【高城】 この本を書こうと思って準備して、どれぐらい時間的にはかかったのですか。
【谷原】 途中で書き方を出版社の方といろいろ打ち合わせしながら変更したり、またもとに戻ったりしているので、結局1年ぐらいかかっているのではないかという気がします。
【高城】 かなり手間もかかったのですね。
【谷原】 そうですね、はい。
「そもそも式論法」で論理を展開していけば、どうにでも論理が構築できる
【川崎】 すごくおもしろいなと思ったのが、女の人に多いと思うんですけども、「こうこうこうだって、みんな言ってたもん」という言い方でつい言いくるめようとしてしまうのですが、それはいかに無駄なことで、人にどう悪く思われるのかということもいろいろ書いてあって、さっき論理的であることと感情的であることは相反するとおっしゃっていましたけど、どちらも大切にされて書かれていますよね。
【谷原】 そうですね。
【川崎】 この本は論理的でなければいけないというわけではないですよね。
【谷原】 そうですね。
【川崎】 それがちょっと珍しいなと思ったのですが。
【谷原】 そこがどうしても言いたかったことであるんですよ。私も法律を勉強する過程でだんだん論理的な考え方になっていったのですが、そうするともう議論するのが楽しくなってしまうのです。
【高城】 議論することが楽しくなる。
【谷原】 勝ってしまうから楽しいのです。
【川崎】 相手を言い負かす感じですね。
【谷原】 そうなんです。その快感にとらわれてしまって、結局何のために議論しているかという根本から離れていってしまうんですね。そもそも議論というのは、よりよい結論に到達することであると考えると、やはりただ議論に勝つということ自体を目的にしたら、目的からかえって離れてしまうことがあると思うんですよ。なので、それを忘れてはいけないというのもどうしても書きたかったことですね。自分は「絶対、勝ちたい」、相手は負けると「悔しい」「憎い」という感じになるので、その部分もやはり決して忘れてはいけないところではないかなと。
【高城】 この本の中でいろいろなケースが出てきますけども、一般的なビジネスをしている方にとって、「これは是非伝えたい」「これを是非参考にして欲しい」ということは何かありますかね。
【谷原】 今の話と関連するのですが、この本の中に「そもそも式論法」というのが出てきます。これは議論をする際には「なぜこの議論をしているのか」というところまでさかのぼって論理を展開していけば、どうにでも論理が構築できるという論法なのです。「そもそもこのコーナーは何のために存在するのか」と。そのためには「インタビューの内容はこうすべきだ」とか、常に目的にさかのぼって議論を展開するという。これはビジネスをやっていらっしゃる方は途中どうしてもぶれることがあると思うのですが、常に「そもそも」にさかのぼると、そこからすっと筋が通ったりする気がしますね。
【川崎】 ぶれたりすることは、やはりありますか。
【高城】 ありますね。この本には1対1の話もあるんですけど、大人数になるとそれがどうしても特にぶれますね。いろいろな主張をしたい人がいるので、それをまとめたり、いい方向に持っていくためにすごく役立つエッセンスがあるなと僕は思いましたね。1対1だけではないですもんね。
【谷原】 そうですね。
【高城】 今回の「私と仕事、どっちが大事?」というタイトルで、是非お聞きしたいんですが、「どっちが大事?」の答えがなくてもいいんですよね。
【谷原】 そう思います。まさにその通りだと思います。
【高城】 そこはどう答えていったらいいんですかね。もし仮に谷原さんが「私と仕事、どっちが大事?」と、彼女に聞かれたらどうしますか。
【谷原】 「それはお前が大事だ」と。
【高城】 それは言いますか。
【谷原】 間違いなく言いますね。即答だと思います。
【川崎】 即答で。
【谷原】 零コンマ何秒かぐらいだと思いますね。表面上の言葉をそのままとらえないということですかね。結局は「私のこと、どれだけ大事なの」と聞きたいだけだと思うのです。
【川崎】 彼女の意図はそれだということですか。
【谷原】 そうだと思いますね。だから感情の方でそれに答えてあげる。
【川崎】 なるほど。
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