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御立尚資
BCGグループ日本代表 [ 能力開発 ]
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御立尚資
[インタビュー]
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戦略「脳」鍛える/東洋経済出版社(4)
2005.09.18
[ TOPBRAIN RADIO ] あのベストセラー著者に聴く!
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実践と理論を組み合わせてこそ、 よいアイディアがうまれるでしょう。
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直感型と科学型の経営者
【主藤】 今、お話を聞いている中で、この直観とかインサイトが強調されている部分が多いので、聞いている方が「じゃあ経営というのはあんまり勉強しなくて直観だとか、芸術的な感性、こちらを磨けばいいんじゃないか」と思われている方もいらっしゃるかもしれないんですけども。
【御立】 なるほど。
【主藤】 そうではなくて、やはりこれ勉学、数字の部分、マーケティングの理論だとか、経済的な基本的な数字、統計、そういうふうなものがあっての直観なのか、それともそういうふうなものなくても直観である程度引っ張っていけるものなのか。
【御立】 これはおもしろくて、例えばアントレプレナー、創業経営者の方に聞くと、思いと直観重視ですね。
【主藤】 思いと直観。
【御立】 ええ。自分は何かをやりたいんだという強い思いがあります。そのうえでこうやったらうまくいくんだという直観があると。ラッキーな人はそこで成功するわけです。
でも複数回成功しないと、例えば上場会社なんてできないですね。そういう方は大抵、自分がそこの定石とか科学の部分を学ばれるか、そういうことができる人をチームの中に入れて成功確率を上げていくと。直観って、ある意味じゃ証明していない時は博打ですよね。博打で勝つ確率を高めようとすると、これはギャンブルに勝つためには、リスクヘッジをどうやってするかいうことになります。
定石をきちんと積み上げて、科学で検証していくと、成功確率が上がる。そうすると終わった時に、ラスベガスからでも喜んで帰ってくる人は、ちゃんと宿題をやっているということになるわけです。なかにはやらなくても、勝てる人もいるというのもこれ事実なんで、人生ってそんなものだと思いますけどね。
【主藤】 なるほど。ということは、定石の部分を担うパートナーというんですか、それをある人に任せたと。優秀な人を雇って。そういう人を自分のパートナーとして据えた場合は、直観的な能力が優れている経営者、直観的な部分を磨くというか、働かせることにある程度、分野を特化しても大丈夫なものでしょうか。
【御立】 これ、おもしろくて、そういうふうにやると、2人で1人というか、相互関係みたいなのが起こるんですね。直観型の方がどちらかというと科学型の方と議論することで、直観がまた高まるんです。科学型の方も単なる理論倒れではなくて直観で刺激を受けると、何を科学しなきゃいけないかのレベルが上がるんです。
組み合わせることでお互いのレベルが上がるというのが本当で、自分は餅は餅屋というふうにするわけでも、必ずしもないですね。相互関係がすごく大事。
大きな組織のリーダーに必要なものとは? 【川崎】 経営者の方で、例えば今、直観とか思いつきというのにすごく特化されてお話されていたんですけども、そういう方って右脳が発達しているから、たぶんパターン認識をするのはすごく得意ですよね。こうするとこうなるだろうと。そういう面も結構あるということですかね。
【御立】 ええ、あります。これ、今のは相互依存。直観型と科学型と言いましたけれども、人間の頭もそうですよね。右脳型の人も別に左脳を使っていないわけではなくて、パターン認識をして、でも後で言葉に直して左脳でやるとか、左脳型の人は数字とか言葉から始めてパターンにすると。
おもしろかったのは、こういう教育をあちこちでやった時に、幾つかクイズを出すんですよ。左脳と右脳両方使わないと答えがすぐ出ないクイズ。これをやって一番早く解ける人にいつも「ご専門は何ですか」って言うと「建築です」って言うんです。理科系なのに、ビジュアルイメージとか、右脳でデザインを考えている人。これがみんな私が出す幾つかのクイズは答えるのが早いんで、それと同じようなことが経営の現場でも起こっていて、両方使えて鍛えている人って、やっぱり強いですよ。
【主藤】 その両方の部分を1人の中に内在させているタイプの人と、2人で役割分担している、あるいはチームで。この2つのパターンが経営で。
【御立】 両方ありえます。
【主藤】 なるほど。御立さんからご覧になって、どちらの方が経営の面ではいいですか?
【御立】 それは、業種とかその会社のポジションによって違うんですね。状況が変わっていく中で、自分が例えばある時1位だったのに3位で、また1位に盛り返したい。こういう時はどちらかというと、チームで直観型の人が引っ張って失敗を減らした方がいいですし、わりと業界状況がずーっと安定しているところで、さあ少し変えなきゃいけない。こういう時は1人で両方持っている人が、両面見ながら自分で方向性を決めていくと。
というのは、直観型の人というのは周りから見て、わかりにくいんですよ。大きな会社になると、やっぱりロジカルに説明してもらわないと人間は動かないですから。
【主藤】 何百人、何千人っていますからね。
【御立】 ええ。自分の中で両方できる人でないと、(周囲は)勘弁してくれよということになっちゃいますよね。何か直観だけで、それを別の人が説明すると、何か宗教家とその弟子が聖書にまとめるみたいな世界になってきて、非常に距離感が出てきてしまうんですよね。
【主藤】 なるほど。その直観的に自分の頭の中から湧き出たものをきちんと自分でも理論的に説明できる能力。これが求められてくると。
【御立】 ええ。ですから非常に大きい組織のリーダーっていうの、両方どうしても必要ですよね。
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