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大和田順子
LOHASプロデューサー/LBA(ロハス・ビジネス・アライアンス)共同代表 [ マーケティング ][ 経営 ]
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2007年こそ、LOHASコンセプトでビジネスを再生・発展
2006.12.19
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2006年はLOHASビジネス元年と言われた。確かに、多くの企業で取り組みが本格化した。2002年9月に私が「日経新聞」や「日経エコロジー」でLOHASを紹介する記事を書いて4年。この間の日本での浸透の経緯と、2007年にLOHASがビジネスに与える示唆についてお伝えしたい。
LOHAS層は本当に存在するのか? ロハスは幻想だった・・!?
2002年9月に筆者がLOHASを日本に紹介し、10月には環境コンサルティング会社イースクエアが国際会議を開き、社会学者ポール・レイ氏や「LOHASジャーナル」編集長フランク・ランペ氏などを招聘した。2004年から雑誌「ソトコト」やラジオ局J-WAVEでLOHASが本格的に紹介されるようになり、若い層を中心に共感の輪が広がり始めた。 そして2005年春、イースクエアによりLOHAS層の調査が行われ、日本で3割弱がLOHAS層であることが明らかになった。上半期の「日経流通新聞」のヒット商品番付で東の大関に格付けされ、特集が組まれ一挙に注目が集まった。これを契機に2005年後半は様々なメディアで紹介されるようになり、流行語大賞語にもノミネートされるほどになった。 が、同年11月に「ソトコト」の出版元であるトドプレスと三井物産がカタカナ三文字の「ロハス」を商標登録し、その商標をビジネスにするという記事が日経に掲載され、一挙に生活者の間で「ビジネスのために広めてきたのか」という非難が集まり、せっかく日本にも環境に関心のある層が浮き彫りになったにもかかわらず、波が引く事態となった。LOHASは幻想だったのか・・・!?
LOHASはエコセレブか?
また、「ソトコト」はLOHASを洗練されたデザイン性とむすびつけ、広めるという功績を果したものの、同誌でのロハス層の描写は富裕層の消費生活と重ね合わせるようなイメージで紹介するものが多く、ロハスはエコセレブ?お金持ちが実践するというイメージも広がり、環境関係の有識者の間では、元来のアメリカで誕生したLOHASと日本で広まったカタカナ三文字の“ロハス”が異質なものであり、ロハスは商業主義であるという批判が高まっていった。 一方、私はそもそものLOHASの考え方を伝えようと、そのコンセプトをすでに実践している日本の企業・団体を紹介する書籍の出版を企画した。今年1月に出版した『日本をロハスに変える30の方法』(講談社・共著)だ。21世紀のグローバルな価値観・ライフスタイルLOHASを日本に定着させ、ひいては日本が人の健康と地球の持続可能性を実現する環境先進国となるために、生活者、企業、行政(自治体)などLOHASを実践しようと思う人が押さえておかなければならないポイントを、国内外の40事例の分析から30の方法にまとめた。 2006年は、中小企業から大企業まで、LOHAS層を意識した消費者調査、商品開発・ビジネス開発が始まり、LOHASは流行からトレンド(潮流)へと変質してきた。5月にはイースクエアがLMI(LOHASマーケティングイニシアティブ)という研究組織を立ち上げ、大企業を中心に47社が参加。6月には雑誌「ソトコト」が中心となって、LOHASとデザインを結びつけた「LOHASデザイン大賞」を創設した。 7月に出版された『メガトレンド2010』(パトリシア・アバディーン著/ゴマ書房)では、2010年、社会はコンシャス・キャピタリズム(意識の高い資本主義)の時代になると言っている。最も大きい注目すべきメガトレンドとして精神性が、そしてLOHASなライフスタイルもメガトレンドの一つとして紹介されている。2007年春には中小企業・起業者を対象としたLBA(ロハス・ビジネス・アライアンス)の設立も予定されており、大企業はもとより中小企業でもLOHASの実践が本格化するだろう。
オーセンティック(本格)LOHASが広まっていく
メディアでは雑誌「ソトコト」が“ロハスピープルのための快適マガジン”と銘打っているため、その他のメディアではロハスという言葉を敬遠するという傾向にあるが、実態としてLOHASをコンセプトとした雑誌の創刊が今年は相次いだ。男性向けライフスタイル雑誌「リクウ」(中央公論)が10月に、ヒトと社会と地球を大事にするビジネス情報誌「オルタナ」の0号が12月に出版された。来春も女性向けライフスタイル雑誌「ナチュラルスタイル」や、小中学校の教師向け雑誌「社会科教育」(明治図書)の臨時増刊号として「ロハスの教科書」(仮称)の発行が予定されている。 また、生活者の関心は潟Cンテージの「社会的価値感調査」(2006年11月実施)の結果からも、LOHASの認知6割を超え、認知層のうち過半数が「LOHASに関心を持っている」と回答しているなど、その関心は依然として高い。
サステナブルな社会を創造する21世紀の価値感、LOHAS、そしてLOHASスタイル
2006年は地球温暖化や気候変動に関する重要なレポートが相次いで世界各国で出され、北極の氷が2040年頃には無くなるというショッキングな予測も報道された。このままでいくと2028年頃までに温暖化は進み続け、地球の平均気温が工業化以前と比較して2℃を超えて上昇すし、ついには気候変動が手に負えなくなり、社会や生態系が壊滅的な影響を被ると予測されている。ある時点を越えると地球の平均気温上昇を、定められた目標値以下にしようとしても不可能になってしまう。この時点のことは「引き返すことのできなくなる時点=ポイント・オブ・ノーリターン」と呼ばれているが、それがこの10年だと東京大学の山本良一教授は主張する。 この重要な10年、ビジネスに携わっている私たちにできることは何か?答えは明白だ。サステナブル(持続可能)な社会の実現のために、事業を通じて社会の問題を改善する、戦略的CSR経営の実践が求められているのだ。社会を変えるのは私たち一人ひとりであり、その社会性こそがLOHASの本質である。21世紀の新しい価値感LOHASは、ライフスタイル、ワークスタイル、そしてビジネススタイルを変え、人と社会・地球を健康にする処方箋だ。
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