東海地方は製造業が盛んな地域として知られる都道府県別の製造業売上額(試算)は愛知県が44兆6085億円で、30年以上連続して全国第1位である(平成26年経済センサス)。輸送機械、工作機械、航空宇宙産業、繊維、窯業などは世界トップレベルの産業集積がある。
この産業集積地の中心、名古屋市において、40年間続く技術者の交流勉強会「PAN倶楽部」(PANは"Person Analog Network"の略)がある。民間の技術者のネットワークや、交流会・勉強会は世の中に多数あるが、40年も続いている会は珍しい。
2016年2月20日には、PAN倶楽部の40周年記念講演イベントが行われ、会員やその家族およそ60名が出席した。
この会を主催するのはアルゴメデス株式会社の代表取締役 坪井治泰さん。アルゴメデスはPAN倶楽部の会員を母体する厳選された技術者コンソーシアムとともに、様々な企業に技術的な問題解決コンサルティングを提供している。
アルゴメデス株式会社 坪井治泰社長
アルゴメデスには、デザイン、ICT、エレクトロニクス、製造加工、生産管理、食品製造、設備など幅広い領域において、時に緊急の、時に困難な問題について、相談が寄せられる。それは次のようなものである。
「海外製のため入手困難な部品があるが、代替品を国内で製造してほしい。」
「加工が難しく、歩留まり率が悪い部品について、加工品質を高めてほしい。」
「機器のトラブル頻発を解決したいが、他社の見積もりでは予算オーバーになる。その1/3の予算で、短期間で解決してほしい。」
「機械の振動を抑えたい。社内でも、他社に相談しても解決策が見つからなかった。」
アルゴメデスはコンソーシアムの技術者が持つ技術と知識を組み合わせることで、これらの問題解決コンサルティングを行ってきた。
PAN倶楽部が40年も継続している秘密、またアルゴメデスが技術者コンソーシアムとともに、様々な困難な問題解決を提供してきた秘訣を、坪井社長に聞いた。
坪井社長は趣味が名刺交換だという。スケジュールが許せば、様々な研究会や講演会に参加して、この人はと思う講師や参加者と名刺交換をし、人脈を広げる。他に会員から紹介されるケースもある。
PAN倶楽部への参加資格は次の3つ。
@特殊な技術を持っている専門家であること。
A約束を守ること。
B裏切らないこと(秘密を守り、仕事に責任をもつこと)。
もちろん、自分の都合のよいところだけ他人を利用しようという自分勝手な人や、会員に迷惑をかけるような人は参加を断っている。
坪井社長は、PAN倶楽部の交流勉強会を通して、さらに参加者の人物を見極める。どの程度の専門知識を持っている人か。信頼できる人か。他人に協力してくれる人か。人付き合いがうまい人か、癖がある人か。大雑把な人か、几帳面な人か。そのような視点から参加者を見極め、厳選した人だけにアルゴメデスの技術者コンソーシアムへの参加を依頼する。
顧客企業からアルゴメデスに相談を寄せられた際には、顧客のニーズや、相手との相性も考慮し、技術者コンソーシアムの中から最適なメンバーを組み合わせ、プロジェクトにアサインする。坪井社長はこのような段階的プロセスによって技術者の人物を見極め、信頼できる技術者ネットワークを構築している。
製造業のみならずサービス業においても、数年前から「オープン・イノベーション」(外部の企業や研究機関、技術者や研究者と連携して、イノベーションを加速させる方法)という言葉が注目されている。政府も「日本再興戦略」にオープン・イノベーションの推進を掲げている。しかしながら、外部の人材との協働にはリスクもあり、そう簡単なことではない。
その中で、坪井社長が40年かけてアナログ的に築いてきた、信頼できる技術者のネットワークは、存在感が際立つように見える。
PAN倶楽部40周年記念講演会にて