最近、深圳郊外で長年工場を経営する社長(以後A社長)とお話する機会が有りました。
なかでも印象的なお話は
「応募者の質の低下」でした。
A社長は近頃ある変化に頭を悩ませていらっしゃいました。
それは生産管理部門や営業部門などの一般職が思うように採用できていないというもの。つまり面接前≠フ社員募集に関する問題です。
2年前までは募集をかければ大量の応募者があり、優秀な人材を想定した給与額で雇用できていたそうです。
ところが今年は応募者が少ないうえ、能力や経験に比較して要求の高い人材の応募ばかり。良い人材に巡り合う機会そのものが減っているそうです。
なぜこのような問題が起こってしまうのでしょう?
たしかに華南エリアのホワイトカラー層の転職市場の動向は、物価水準の上昇に比例し上昇傾向にあります。
その一方で、転職を希望する人材数は2009年以降ほぼ同水準で推移しています。決して転職希望者数が減少し応募者が減った訳ではないのです。
そこでご指摘させていただいたことは、A社長の採用チャンネルです。
A社長は3年前まで人材紹介会社とのやり取りを自ら行なっておられました。
しかし現在は多忙のため社長自らが採用した中国人人事総務部長(30代女性)に採用指示を出し、各人材紹介会社や求人サイトとのやり取りを、@Aのように担当させていたのです。
@中国人人事総務部長は製造部門管理職、営業部門の人員募集の際、社長から指示された募集条件に適合しない人材をフィルターに掛け、条件にマッチしない応募者の足切りを実施A各部門の責任者が足切り通過者の履歴書を再チェック後、社長に推薦 ─般的には二重のチェック体制を経ているうえに、慎重な方法なのですが、A社長の場合は裏目に出ていました。
保身が生む排除まず@の時点でハードルが高すぎました。年齢や語学レベル、経験業界などの僅かなミスマッチでも足切りの対象としていたのです。この問題は人事部長と採用条件の打合せを重ねることで、修正はさほど難しくないかと思われます。
注意すべきはAの問題。
これは国籍を問わず起こり得ることです。社員の保身意識が強く、自分のポジションを脅かす可能性のある優秀な応募者を、故意に書類選考で落選させるなどの妨害が行われていたのです。保身第一の社員にとっては、優秀な社員の獲得による業績アップは二の次というわけです。
(対応策は次号)
回答でここまでわかる面・接・指・南「人材の質・量を疑う前に、採用チャンネルの可視化を実施せよ」
<筆者>
田中洋介:
10Year’s Staff総経理。1980年札幌生まれ。IT関連会社経て現職。多数の転職支援実績をもつ誠実がモットーのキャリアコンサルタント。
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