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HKM-日商快訊-
[ 中国 ]
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中国会計税務の気になる動向 増値税改革の新展開
2012.11.12
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中国でめまぐるしく変わる税法について、日系企業のみなさまが理解し、中国でのビジネスがスムーズに遂行できるよう、わかりやすく解説させていただきます。
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はじめに 中国国務院は2011年10月26日に上海において交通運輸業と一部現代サービス業が増値税改革の試験実行対象企業になる通達を公布しました。これは、従来営業税の課税対象であった一部の取引について、増値税の課税対象に変更しようとするものです。
また、中国国務院は2012年 7月25日に、現在上海で実施されている増値税改革の適用範囲を2012年8月1日以降、順次拡大することを公表しました。具体的な適用時は表1の通りです。
増値税及び営業税の概略 増値税と営業税はいずれも流通段階で課税される「流通税」と呼ばれるものです。しかし、増値税は売上と仕入の差額に対して課税されるのに対して、営業税は原則として売上金額そのものに課税されます。課税対象が異なるため、単に税率の高低だけを見て税務コストの有利不利を判断することは適切ではありません。
増値税改革の概略 営業税の課税範囲は、中国国内における課税役務の提供、無形資産の譲渡及び不動産の販売取引です。この内、今回の増値税改革は、交通運送業と一部の現代サービス業を対象に、営業税の対象から増値税の対象に変更しようとするものです。
とはいっても、これらの業務を営業項目としていない会社に影響がないわけではありません。これらの業務を行う会社をサプライヤーとして利用する場合、サプライヤーへの役務代金と同時に支払った増値税額は、売上代金と同時に回収した増値税額と相殺した上で最終の納税額を計算することができるようになります(仕入税額控除)。
営業税にはこの仕入税額控除の制度がありませんが、増値税には仕入税額控除の制度があるため、今回の増値税改革は、多くの企業に影響を与えることになります。
国家統計局は、上海市に所在する企業の約70%が増値税改革による恩恵を受け、税負担が軽減されるとする試算結果を発表していることから、大部分の企業にとっては税務コストが減少することが予想されます。
実務上の留意事項 今回の増値税改革が今後の企業経営に与える影響を事前に検討し、対策を講じることが重要と思われます。 例えば、取引価格に加えて増値税分を追加で回収できるように得意先との契約を再検討したり、仕入先の増値税改革に伴うコストの減少を自社の仕入価格に反映してもらえるような交渉を行う事などが一例として挙げられます。また、自社の業務システムや会計システムが新たな税制に対応できるかどうかを事前に確認することも重要です。
<筆者> 山口 和貴/日本公認会計士。大手監査法人にて法定監査業務、株式公開(IPO)業務、IFRSアドバイザリー業務など、会計税務に関する全般的なアドバイザリー業務の経験を持つ。グラント・ソントン中国 日本デスクのシニアマネージャーとして、中国・香港進出企業に対して様々なサービスを提供している。 本コラムへのご意見・ご要望は、E-MAIL: k.yamaguchi@cn.gt.com まで。
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