資産管理 在庫は会社の大切な資産。セキュリティ管理を徹底し、棚卸差異の要因を財務担当者も同じ目線で分析し、現場にその重要性を説明することが、再発を可能なかぎり抑えることになります。
完成品、仕掛品、損耗品、不良品(良品の場合もあるかも)垂れ流しで倒産する企業もあります。財務室に座ったままで現場に立寄らない財務担当者は責任感も希薄な人とは限りませんが、この点はローカル担当者のタテ割り業務意識を改善しなければいけません。
発票管理 発票はお金です。支払い最終処理はすべて発票に基づかなければできません。発票がすべてだと断言しても過言ではありません。逆に発票さえあれば、理論上は利益操作もできることになります。
多くのローカル企業は発票を集めて利益を拠出との噂もありますが、これは違法性が高いので、良い会社の皆さんは絶対マネをしないでください。
財務としては発票管理規定を作成して、罰則が一段と強化されたニセモノ発票撲滅に対応しましょう。
財務担当者の役割 目覚しい経済発展を遂げた中国ですが、コンプライアンスや内部統制の観点から見れば、財務内容開示等のグローバルスタンダードへの対応は?と思わざるを得ません。
これはローカル経営者の意識や良い人材の不足が要因であると思われがちですが、私の考えでは、外国先進企業が指導し、育てていかなければならない問題だと思います。それを担うのは現地責任者と共に、親会社の財務担当者です。
環境や国民性の違いを要因に“相まみえない”“すべて日本式を押し付ける”“双方上から目線”では埒があきません。ここは「呉越同舟」、双方メリットをモチベーションに、根気よくお付き合いしながら、コミュニケーションを取る方法をお勧めします。
ローカル会計師から見た日系企業財務管理「財務表の解釈に対し、あまりにも難しい言い回し(専門通訳でも翻訳難)や、あやふやな言葉がある。財務とは白黒はっきりしているもののはずであるが……。
できるだけ日本本社の要望に応えたいが、特に税務は現地方式でないと通じないことも多く、“郷に入れば郷に従え”も必要。
日本は生産を代表として何事にも業務効率を重要視する国だと想像していたが、内部統制によって管理部門以外の部署の業務効率は悪くなっているようだ……(筆者も同感です)。
日本の財務担当者が変わると『以前は以前、これからはボクのやり方でやってくれたまえ』と、やり方も変わる不効率さ……」
ひと言、失礼…… 珈琲店で隣に座る見ず知らずの中国人2人の会話を傍受。「日本企業との付き合いは安心。素晴らしい」「私たちも見習うべき会社運営だわ」「企業の管理システムが良いのだ」。聞いていて照れ臭くもあり誇らしい気持ちにもなりました。
中国は日本企業の素晴らしさを認めています(メディアで大きく評せない)。
財務の方々にお伝えしたいのは、仲良し関係になれとは言いませんが、親子関係にあるローカルの懐に飛び込んで“実情を知る”という行動は、相互理解の向上や現地財務管理の改善に最高の手段だということ。そして、改善を理解して実行するのはローカル財務担当者のお仕事です。
<今月のキモ>日本の財務担当者は現地の実情をナマで知り、
サポートに徹するべき!
<筆者>
宮城紀生/
WAYAコンサルティング副総経理。1975-2000年まで欧米及びアジアの海外関連業務を経て、2001年より深圳を拠点にコンサルティング業務に携わる。顧客の相談に親身になって対応する、サッカーと自然を愛するベテランコンサルタント。